大村あつしオフィシャルブログ

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　私の悩みは、ある雑誌編集長との人間関係でした。その雑誌で連載を始めた私は、毎回、自分としては会心の記事を寄稿していたつもりですが、いつも編集長と対立してしまうのです。編集長からのメールには、次のような文言が踊っていました。

「大村さんの記事は、初級者の目線から見た書籍風の解説手法が用いられています。しかし、雑誌の場合は、中級者の読者もいれば上級者の読者もいます。大村さんの解説手法を否定するつもりはありませんが、お願いしている原稿は書籍ではなく雑誌記事なのです。読者のレベルを総合的に判断しながら執筆してください」

　しかし、そのときすでに書籍の売上累計が五十万部を超えていた私は、自分の解説手法に対する大きなプライドがありました。編集長のメールを読んでも、「はい、そうですか」と素直に納得できない自分がいたのです。

　やがて、お互いの不満は絶頂に達し、メールでは微妙なニュアンスが伝わらないと考えた私たちは、「お酒でも飲みながらざっくばらんに本音をぶつけましょう」ということになりました。そして、その酒の席で私は思い知らされることになります。

「大村さんのプライドは尊重します。しかし、私は二十年もこの業界で生きているんですよ。それに、大村さんには期待しているからあえて厳しい指摘をさせてもらっているんです。見込みがないと烙印を押した人間に注意はしませんよ。いや、そもそも、とっくに連載を打ち切っていますよ」

　私は返すことばがありませんでした。編集長は、私の四倍ものキャリアの持ち主なのです。それ相応の実力とプライドがあっても不思議はありません。一方の私は、雑誌連載に関してはほとんど経験がありませんでした。ただ、自著が五十万部以上売れたという記録に酔っていただけなのです。

　大いに反省した私は、その後は厳しい指摘をされても、「注意」ではなく、「期待」「激励」と前向きに受け止められるようになっていました。ですから、そのことでストレスを感じることはなくなっていました。

　今振り返ると、「雨が憂鬱」と言っていた当時の私は滑稽だったと感じます。雨が降るのは「悲しい出来事」ではありません。単なる「出来事」です。「悲しい」のはそう判断している心です。実際、日照り続きの後の雨であれば、農業に従事している人にとっては嬉しい出来事でしょう。

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