メチャ気になる Vol.20
先日2015年の出版統計が発表されました。それによると書籍も雑誌も前年に引き続き売り上げが減少。1996年をピークにして出版売上が減少していますから、出版不況は20年になろうとしています。本が大好きで自らも出版している私にとって、これはとてもショックな数字です。
ところがその統計結果に反する記事を見つけました。
疑問符がついていますが、「終わった」と書かれています。実際に記事を読んでみると、とても納得のいく内容でした。
確かに統計を見ると出版不況は継続していて、さらに悪化しています。今月の5日には、中堅取次会社の大洋社が業績不振を理由に自主廃業を検討している、というニュースが流れたそうです。深刻ですね。
ところがこの記事の著者は統計に隠されている錯覚を明らかにしています。出版不況と言っても、書籍と雑誌に分けられます。統計はどちらも減少しています。特に雑誌の売上減少はヤバいレベルです。廃刊になった雑誌の記事をよく目にしますね。
ところが驚いたことに、その統計の雑誌の項目にコミックが入れられているそうです。ジャンプ等の週刊誌ではありませんよ。『進撃の巨人』や『ちはやふる』等の単行本のコミックも雑誌扱いになっているのです。
どうやら雑誌か書籍かという選択によって、出版業界の扱いが違うそうです。そこでコミックに関して、出版社は雑誌というジャンルを選択しています。おまけに今回の出版統計には電子書籍の売上が計上されていません。つまりまったく実態を反映していない、ということなのです。
そこで雑誌の項目からコミックを書籍に移動し、さらに電子書籍の売上を加えるとどうなるか?
雑誌の売上は悲惨です。コミックを入れても減少だったわけですから、純粋な雑誌だけで統計を取ると目も当てられない惨状です。
ところがコミックと電子書籍の売上を加えた書籍は、驚くほど売上が伸びています。電子書籍も近年は認知度が高まっていますので、順調に売上を伸ばしています。コミックは従来から順調ですし、一般書籍も決して大幅に売上が落ちているわけではありません。
出版社としては斜陽になった雑誌も同時に抱えていますから、全体としての不況を実感しているのでしょう。この記事によって統計を再構成すると、書籍はピークだった1996年を上回る売上になるとのこと。
だから、「出版不況は終わった?」というタイトルになります。記事の中では、はっきりと「終わった」と宣言されています。
とてもテンションが上がる記事です。出版不況という文字に慣れていたせいか、何となく雰囲気に流されていたのかもしれません。書籍に関して言えば、まだまだ伸びる可能性がある、とうことです。いや〜、嬉しい記事です。
活字離れが進んでいる、と言われています。でも以前から私はそう思っていません。ペンを手にして文字を書くことが減っただけで、世の中には活字が溢れています。SNSの記事は基本的に文字媒体が中心です。もちろんブロードバンドの進化によって動画もネットを賑わせています。それでも決して活字を読むことが敬遠されているわけではない、と思います。
ただ小説のような長文の文字について、若い世代は敬遠する人が多いでしょう。コミックや動画のほうがいい。それはよくわかります。ですから書き手としては、コンテンツとしての「長文」をどれだけ価値のあるものにできるかどうかでしょう。
書籍が主流だった時代と違い、他の媒体が充実しています。書籍が売上を伸ばしつつあるといっても、より上質なコンテンツが求められています。出版すれば売れる、という時代でないのは確かです。
しかし統計の錯覚に惑わされずに、現状を正確に把握することは大切ですね。この記事を読んでそう感じました。
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