新『パピヨン』は生々しい
ハリウッドで実施される映画のリメイクは、外国映画で人気になった作品が多い。あるいは公開当時はいまいちだったけれど、いまの人気俳優を使うことでリノベーション的な意味でリメイクされる場合もある。
だからすでにハリウッドで成功した作品がリメイクされることは少ない。なぜならそこには『名作』ゆえの強大な壁が立ち塞がっているから。比較という意味だけでも、すでに大きなアドバンデージを前作に奪われている。
そんな難しいリメイクにチャレンジした作品がある。
2021年 映画#136
『パピヨン』(原題:Papillon)という2017年のアメリカ、セルビア、マルタ、モンテネグロの合作映画。
この『パピヨン』といえば1973年の作品が有名。主人公のパピヨンを演じたのスティーブ・マックイーン。そして相手役ルイ・ドガを演じたのはダスティン・ホフマン。この二人の共演が強烈すぎて、『パピヨン』といえば彼らの顔しか浮かばない。ストーリーについて説明する必要はないだろう。
ボクも子供のころから何度も観た作品。とにかく何度捕まっても脱獄しようとするスティーブ・マックイーンの姿を見ながら、子供ごころにおかしかったのを覚えている。だって最後は筏を作って崖から海に飛び込むんだからね。それでも無事に脱獄して、ベネズエラの市民権を獲得している。つまり実話だということ。
この二人の名優に挑戦するなんてすごい。気の毒だなぁと思いつつ新しい『パピヨン』を観た。ところがこれがよくできている。実話ということを前面に押し出して、1930年代以降の世界がリアルに描かれていた。
1973年の『パピヨン』の印象は、どことなくほんわかしたものを感じていた。冤罪で投獄されたパピヨンにすれば必死なのはわかる。だけど脱獄を諦めないスティーブ・マックイーンの姿は『大脱走』の彼と重なり、どことなく笑える雰囲気がある。
ところが新しい『パピヨン』はちがう。とてもシリアスな物語。そして恐ろしい。流刑場で実施されるギロチンでの処刑シーンなんて、分かっていても心臓が飛び出しそうな気分になった。劣悪な環境で、そこには絶望しかない。とにかくあまりの生々しさに、ドキュメントを見ているような気持ちになった。
パピヨンを演じたチャーリー・ハナムは素晴らしかった。写真を見てもわかるけれど、どことなく風貌がスティーブ・マックイーンの若いころに似ている。過去名作のリメイクというハンディキャップを感じさせない最高の演技だった。
そしてルイ・ドガを演じたラミ・マレックも本当に素敵だった。調べてみるとこの作品は、『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じる前の作品だったんだね。これからの活躍が楽しみな俳優さんだと思う。来月から公開される『007』の最新作では悪役を演じている。きっとすごい演技なんだろうな。
『パピヨン』としてははどうしても1973年の作品に軍配が上がってしまう。だけどこの物語の真実を体感したいなら、絶対にこの新作がおすすめ。難しい挑戦だったけれど、想像以上の大健闘だと思った。
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