言っちゃダメだよね?
今日はブルームーンで、かつ皆既月食だよね。昨日の天気予報によると、近畿全域は曇りで、月食の観察は難しいとのことだった。
たしかに午前中晴れていたのに、午後から雲が多くなってきた。やっぱり無理かなぁ、と思いつつバルコニーから夕方に大阪方面をみると、薄い雲がかかっているものの、青空が見えている。もしかしたら、もしかするかもよ。
月食といえば思い出すことがある。2000年の夏のこと。祇園の芸舞妓事務所を退職したボクと妻は、7月のあたまに信州へ旅行に行った。そこそこ大手の旅行会社が企画するツアーだったんだけれど、宿泊したホテルのひどいこと。
まぁ格安ツアーではあったので、文句は言えないかもしれない。それにしても食事はウンザリだし、部屋の陳腐なことこのうえない。安物のクッションを重ねたようなベッドで、とてもマットレスとは言えないしろものだった。部屋も狭くて、清潔という概念から遠く離れたような状態だった。
そんなとんでもない部屋だったけれど、唯一良かったのはベッドから満月が見えたこと。そしてその日は皆既月食だった。
部屋の明かりを消して、月明かりだけでみる満月は素敵だった。そして満月が欠けて、やがて戻っていく過程を見ていると、神秘的なファンタジーの世界に誘い込まれたような気がした。とてもいい思い出になった。
もしかしたら、そんな月食が今夜も見られるかもしれない。だけどそのときは夏だったけれど、今は寒波にみまわれた真冬。とてもじゃないけれど、バルコニーに出て月を観察するなんて無理だろうなぁ。まぁ、雰囲気だけでも味わえたらよしとしよう。
さて、久しぶりに超、超、超、面白いミステリー小説を読んだ。
『危険なビーナス』東野圭吾 著という小説。
久しぶりに東野さんの小説を読んだけれど、やっぱりすごい。それほど凶悪な事件を扱っているわけではない。でも緻密な設定と、的確な伏線。そして最後にやってくるどんでん返し。もう驚くしかないほどの素晴らしい作品だった。
主人公は獣医の伯朗という名の30代の男性。父は画家だったけれど幼いころに病気で亡くし、母も学生時代に事故死している。小学校3年生のころに母は再婚して、矢神という医師が義父となった。大金持ちの一族で、のちに明人という弟ができる。
その明人は天才的な頭脳を持つ人間で、アメリカのシアトルで事業を起こしている。ところが独身だと思っていたはずの明人なのに、その妻だと言い張る楓という美人が接触してくる。
明人にとって実の父であり、主人公にとっては義父にあたる男性が危篤とのこと。二人だけでアメリカで結婚式をあげたが、親族に報告するつもりで帰国したところ、明人が何者かに拉致されてしまった。だから一緒に探して欲しい、という依頼だった。
主人公は矢神家と縁を切っていたので、関わる気はなかったが、どうやら相続争いが起きているらしい。それには事故死した自分の母親も関係してくる。父親は違うとはいえ、拉致された弟の明人のことも心配になる。そこで自称『妻』と協力して、明人の行方を探そうとする物語。
2016年に出版された小説なので、ここまでにしておこう。ネタを言いたいけれど、言っちゃダメだよね?
とにかくすごい。事故死であるはずの母の死が、実は他殺であるという可能性が出てきた。どうやらとんでもない貴重なものを、母は義父から譲り受けたらしい。義父が研究していたサヴァン症候群というものが関連している。
映画の『レインマン』で、ダスティン・ホフマンが演じた自閉症の人物が、そのサヴァン症候群というもの。障害を持っているけれど、あることに関して天才的な能力を見せる。亡くなった主人公の父が、脳腫瘍による後天的なサヴァン症候群だったこともわかる。
母は本当に事故死なのか?
明人の妻だと名乗る楓の正体は?
義父が母に残した貴重なものとは?
そして拉致された弟の明人の運命は?
これらの謎が全編にわたり散りばめられて、少しずつ解き明かされていく。そして最後の最後に、えぇぇぇ〜〜〜、と思わず叫んでしまう。深夜にも関わらず、ボクは昨晩に絶叫しそうになって、あわてて口をおさえたほどの衝撃だった。
あぁぁ、言いたいよ〜! なんと明人の妻の正体はね……。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。