ピュアな愛に触れたい人へ
昨日、胸くその悪いニュースを見た。性同一性障害で性転換手術を受けた看護助手の女性に同意なく、その事実を病院が他人に明かしたというニュース。ホント信じられないことをする。
その女性は同僚に「気持ち悪い」と言われたり、手術したあとを見せるように強要されたとのこと。看護助手の女性は精神的に悩んで病院のベランダから飛び降りた。幸いにも命は助かったけれど、重症とうつ症状によって現在も働けない状態が続いている。
LGBTに対する理解が進みつつある現代社会でも、こんなことが起きている。自分とちがうことで、なぜここまで攻撃的な態度を取れるのだろう? 本当に悲しいし、腹が立つ。
現代でもこんな状況だから、1970年代だったらどうなるか想像がつくだろうと思う。今日観た映画は、まさにその話題を扱った作品だった。
『チョコレートドーナツ』(原題: Any Day Now)という2012年のアメリカ映画。
主人公はルディというゲイの男性。時代は1979年。ルディは歌手を目指していたが、ゲイバーでショーをやって質素に暮らしていた。ある日、となりの部屋に住むシングルマザーが麻薬で逮捕されて実刑判決を受ける。その家にはマルコというダウン症の少年がいた。
ルディはそんなマルコを見捨てておけず、恋人になったポールに相談する。検察官のポールは刑務所にいる母親に交渉することで、ルディの監護権を承認してもらう。その結果、刑務所から出てくるまでマルコを預けることに同意してもらうことができた。
そうしてルディとポールという同性愛者の両親と、マルコの3人の生活が始まる。それはとても幸せな時間で、それまで育児放棄をされていたマルコにとっては考えられないような幸せな時間だった。
だけど時代は1979年。同性愛者への偏見は厳しく、むしろ悪意に近い。ポールは仕事をクビになるし、同性愛者を嫌悪する人たちは、あらゆる法的手段を使ってマルコを2人から引き離そうとする。そして2人の検討もむなしく、この3人が幸せに暮らす日々は戻ってこなかった。そういう意味では悲劇の物語。
ラストシーンでポールが手紙を書く。なぜなら施設を飛び出して二人の両親を探し求めたマルコが死んでしまったから。ポールは3人の親子がどれほどピュアな愛で結ばれていて、どれほど幸せに暮らしていたかを記した。
送付先はマルコを引き離して施設に送りこみ、最終的には麻薬中毒の母親の元へ戻してしまった判事、検事、証人たち。同性愛者への偏見によって、この人たちがマルコの命を奪ったことを知ってもらうため。
フィクションだと思うから観ていられるけれど、切なくて胸が張り裂けそうな気持ちになってしまう。そいつら全員そろって地獄に落ちろ、と言いたい気分だった。
観ている人にここまで思わせるのは、この映画が素晴らしく、ピュアな愛にあふれているからだと思う。同性愛者を嫌悪する人たちと3人を対照的に描くことで、本当の純粋な愛をスクリーンに映し出したんだと思う。
地味であまり知られていないけれど、映画史に残すべき名作だと思う。
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