暴力に打ち勝つ音楽の魔法
アリアナ・グランデの勢いが止まらない。去年の11月にリリースした『Tthank u, next』というシングルは、彼女にとって初のビルボードNo.1を獲得した。現在でも、まだトップ5前後に残っている。
その直後に『Imagine』というシングルをリリースして、今年になってさらに新しいシングルを発表している。それが『7 rings』という曲で、昨日のビルボードのランキングだと、アメリカとイギリスのチャートでどちらも1位だった。すごすぎるよね。
そしてこれらの曲が収録されたアルバムである『Tthank u, next』が来月の2月8日にリリースされる。前作の『Sweetener』というアルバムは、昨年の8月に出されたばかり。わずか半年で次のアルバムを出すなんて、他のアーティストたちはその加速度に追いつけない気分だと思う。
彼女はPTSDを抱えているそう。2年前にイギリスのマンチェスターでのライブ中、爆弾テロに遭遇しているから。大勢のファンが亡くなっている。あの事件以来、彼女のなかで何かが変わったような気がする。
理不尽な暴力に立ち向かうため、自分には音楽しかないと感じたのでは? その後の彼女の活動を見ていると、なんとなくそんな気がする。それは自分自身のためでもあり、暴力の苦しみから立ち直ろうとしている人たちのためでもあるんだろう。
それは彼女が、暴力に打ち勝つことができる音楽の魔法に気がついているからだと思う。
今日観た映画も、そんな音楽の魔法によって暴力に立ち向かった作品。
『サウンド・オブ・ミュージック』という1966年のアメリカ映画。
恥ずかしながらボクは勝手な思い込みで、この映画を陳腐なミュージカル映画だと切り捨てていた。なぜならいつも映画の冒頭で退屈になってしまったから。ところが数年前に一念発起して最後まで観たとき、この映画の素晴らしさに圧倒されてしまった。
いまでは最高のミュージカル映画だと思っている。今日は久しぶりに観たけれど、やっぱり感動で泣いてしまった。
この映画の主人公であるマリアは、音楽によって2つの暴力に打ち勝っている。
そのひとつは、妻を亡くしたトラップ大佐による7人の子供たちに対する精神的な暴力。音楽を愛していたトラップ大佐だけれど、妻の死によって心を閉ざしてしまった。だけど家庭教師のマリアによって、トラップ家に音楽が復活する。
その癒しの力は子供たちだけでなく、トラップ大佐の凍りついた心も溶かしてしまった。映画の前半で子供たちに歌うこと禁じていた大佐が、自ら声を出して歌う。彼が『エーデルワイス』を歌うシーンは、涙なしで見られない。
もうひとつの暴力は、ドイツのナチスがもたらしたもの。祖国であるオーストリアを併合されたトラップ大佐は、ナチス軍による召集令状に抵抗した。それで国外逃亡を図ろうとするが、ナチスに洗脳されたオーストリア人に監視されてしまう。
そのトラップ家を救ったのが、これまた音楽だった。音楽コンクールに出演することで、ナチスの注目を引きつけておいて国外逃亡する。そのときに大きな役割を果たしたのが、これまた『エーデルワイス』だった。この歌が観客の心を感動で震えさせる。オーストリアの人たちにとって、この曲は祖国を象徴する歌なんだろうね。
音楽は魔法を持っている。そんなことを感じさせてもらえる作品だと思う。また何度も観たくなるよなぁ。
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