権力は思想を捻じ曲げる
パラリンピックも終わったことだから、日本のメディアも激動している世界情勢に目を向けて欲しい。ミャンマーのクーデターはすでに遠い過去のように感じられ、アフガニスタンにおけるタリバン支配も、日本人に死者でも出ない限り傍観されそうな気配がしている。
昨日の報道によると、アフガニスタンに残された日本大使館の現地スタッフら約500人の退避交渉にあたるため、政府代表を派遣するとのこと。タリバンがどのような対応を見せるか不確定だけれど、甘い状況ではないと思う。
タリバンとしては世界からの孤立を防ぎたい。それゆえある程度の譲歩はしてくるだろうと思う。そんな空気を感じて、タリバンは以前の組織とはちがうと語っている専門家もいる。でも中東情勢に詳しい人のTwitterを見ていると、タリバンは根本的に何も変わっていないという意見が多い。
それを証明するかのように、アフガニスタンで医療活動に従事してきた中村哲さんの壁画が、タリバンによって消去されたことが昨日になって報道されていた。中村さんはアフガニスタンの武装勢力によって射殺された。タリバンは犯行を否定していたけれど、国外逃亡したアフガニスタンの前大統領のガニー氏はテロだと明言している。
タリバンはイスラム法に基づいて統治すると宣言している。だけどタリバンによる女性に対する過酷な差別が終わるとは思えない。なぜならタリバンはイスラム法を捻じ曲げているから。
リンク先の記事は、そのことをわかりやすく解説した記事。イスラム法は女性の差別を認めていない。タリバンは過去の慣習を逆手にとって、それを曲解しているという。この記事で指摘されている、日本人が誤解しやすい3点を抜き出してみよう。
第一に、イスラム教の教え自体は、男女平等が基本であるという点だ。
第二に、イスラム本来の教えや守るべき規範と、国や政治団体の方針を峻別することが大事である。
第三に、イスラム教徒の女性イコール「抑圧された存在」と捉える点だ。
一般的なイスラム教国家において、基本的に男女は平等で、政治とコーランの教えは明確に区別されていて、女性はさほど抑圧された存在ではないということ。
ジェンダーの平等に関していえば、イスラム社会より日本の方が劣っているというのが世界の認識。女性の社会的活躍度に関して、ダボス会議のジェンダーギャップ指数では、日本は複数のイスラム教国を下回る順位とのこと。例えば、UAE(アラブ首長国連邦)やヨルダンは日本より順位が上になっている。
つまりアフガニスタンがイスラム国家だから女性が差別されているのではなく、タリバンがイスラム法の教えを捻じ曲げているということ。このことを理解しておかないと、日本政府がタリバンと交渉しても決裂する可能性がある。相手の本質を理解していないということだから。
宗教思想ではないけれど、同じことをやってきた国がある。それはとなりの中国。現在のタリバンが支配したアフガニスタンの状況は、中国共産党がこれまで他民族を支配してきた構図とよく似ている。権力によって人間の思想を捻じ曲げることで、恐怖政治を断行する。チベットやウイグルの恐ろしい現状を見ればわかるはず。
日本は国の代表が代わろうとしている。誰が新しい首相になるかわからないけれど、新政府としては中国にどう対処していくか真剣に考えるべきだと思う。アフガニスタンの現状を通じて学ぶことで、日本は最悪の事態に備える必要があると思う。
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