真のプロは道具を大切にする
ボクはロックギタリストが大好き。でもどうしても共感できない行動がある。それはギターを破壊する演出。
演出上のパフォーマンスだということはわかっている。敬愛するジェフ・ベックも過去にやっていたし、ザ・フーなんかギタリストのピート・タウンゼントだけでなくドラマーまでドラムセットを破壊する。ジミ・ヘンドリックスも、KISSのポール・スタンレーもショーのひとつとしてギターを壊す。そして会場にいるファンに壊れたギターを投げ入れたりする。
とにかく著名なロックギタリストは、ほぼギターの破壊をパフォーマンスとしてやっている。見落としているかもしれないけれど、唯一エリック・クラプトンがギターを壊している動画を見たことがない。どちらかといえば、彼はいつもギターを自分の子供のように大切に抱えている気がする。ヤードバーズやクリームに在籍していたころの彼はどうだったのか知らないけれど。
日本のミュージシャンでギターを大切にしていると感じるのは、スターダストレビューの根本要さん。彼がある著名なミュージシャンとコラボして、インタビューを受けていたことがある。要さんはギターを大切に抱えているのに、もう一人のミュージシャン(誰とは言わないけれど)は、ギターを杖のように身体を預けて立っていた。この二人の様子だけで、楽器に対する愛着の差が見えてしまう。
要さんはステージの様子でも、ギターに対する愛着に溢れている。曲によってギターを持ち替えるとき、それまで手にしていたギターを壊れものを扱うかのように優しくそっと置く。そんな様子を見ているだけで、とても気分よく演奏を楽しむこができる。
まだロックギタリストの場合、ショーのパフォーマンスとしてやっているから理解できる。怒りに任せてギターを破壊しているわけじゃない。ボクがもっとも嫌悪感を覚えるのは、ラケットを叩き壊すプロテニスプレイヤー。
自分のプレーに納得できないのはわかるけれど、大切な道具のラケットに八つ当たりする行為は不快でしかない。大坂なおみ選手もたまにやるし、先日は外国のプレイヤーが壊したラケットが観客に当たって怪我をするという事故があった。
そんなテニスプレイヤーの行動について、とてもわかりやすい解説がされている。
なぜテニス選手はラケットを投げるのか? → メーカー「自腹で買ってないから…」
記事のタイトルを読むだけで答えがわかる。そしてそのとおりだと思う。記事に書かれていたテニス用品の大手メーカーの人の言葉を抜粋してみよう。
「彼らはラケットを自腹で買ってないから壊せるんでしょう。トップ選手はスポンサーからタダでラケットを提供されますから。自腹だったら叩きつける前に制御がかかりますよ。メーカーとしては悲しいですね」
返す言葉がないくらい激しく同意。アマチュアでテニスをやっている人なら、ラケットは何より大切にする道具。それを怒りに任せて破壊するなんて考えられない。著名なプロ選手だって、アマチュア時代はラケットを大切にしていたはず。でもいつしかその気持ちをどこかに置き忘れているんだろうね。
ギターを破壊するから、ラケットを投げるからといって、そのミュージシャンやテニス選手の全人格を否定するつもりはまったくない。彼らの演奏は好きだし、素晴らしいテニスプレーにも拍手を送る。だけど破壊行為については違和感しかない。
真のプロというのは、道具を大切にする人だと思う。物にも心があるということを、本当のプロなら知っていると思うんだけれどなぁ。
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