SOLA TODAY Vol.176
1本数万円、あるいは数十万円もするワインやブランデーを飲んだことがあるだろうか? そうそういないよね。
旅番組や料理特集の番組を見ていると、そうした高級ヴィンテージのお酒が登場することがある。一方でワインなんて安かったらボトルを千円以内で買えたりする。そのちがいがどれほどのものか、一度でいいから試してみたいと思うことがある。
先日ジェフ・ベックのライブに行く前、薪釜でピザを焼いてくれる大阪の店で夕食をとった。そのとき、ボクにしては高級なグラスワインを注文した。金額にしたらたいしたことないのだけれど、やっぱり香りと味がちがう。値段と味は、ある程度相関関係があるのかもしれない。
その値段のちがいは製法だけでなく、熟成という過程が大きい。ブランデーなんか高級品だと20年も熟成したりする。それだけの時間をかけるわけだから、値段に反映するのは仕方ないのだろう。
でも近い将来同じ品質のお酒が、とっても安く飲めるようになるかもしれない。
たった3日で2年分の酒の熟成が可能な方法が判明、使うのは「超音波」
スペインの大学教授が、とても興味深い実験を成功させた。なんとたった3日で2年分の熟成と同じレベルのお酒を作ったらしい。それはタイトルにもあるとおり、超音波を使う。記事から抜粋してみよう。
『世の中に存在する多くのお酒が「熟成」することが味の鍵となっています。ブランデーも例外ではなく、高級ブランデーは何十年も樽の中で熟成されることで完成します。そんな熟成の行程を一気にショートカットする技術を、スペインのカディス大学で教授を務めるバルム・ガルシア氏が発見しました。
ガルシア氏は研究でアルコールの中にオーク材のチップを入れ、それに3日間超音波を浴びせて熟成させるという方法をとりました。熟成の段階では「温度」「オークチップの量」「アルコール度数」「通気量」などの条件を変えて実験を行っており、その後、作成したアルコールは複数人の専門家に評価してもらったそうです』
その専門家の評価によると、実際に2年熟成させたお酒にはかなわないとしても、品質的にはほぼ同じレベルらしい。仕組みとしては、超音波によって形成された小さな泡が爆発的に破裂して、オークチップから合成物を出すのを促す。その合成物によって風味が加味され、熟成が加速するという仕組み。
ヨーロッパの法律だと、この手法を使えば『ブランデー』とは呼べないらしい。既得権益者が好きそうな法律だよね〜w
でも味に遜色がなければ、世界中で取引されるかもしれない。そうなれば値段の高いブランデーが、以前のように売れなくなるかも。
科学の進化というものは、ある意味『タイムマシン』と同じ性質を持つ。2年を3日に短縮できるということは、20年の熟成が数ヶ月で可能かもしれない。それは時間を超越したのと同じだと思う。
『時は金なり』とは、まさにそのとおり。時間を短縮することができれば、同じ品質のものを安く提供できる。特に最近のイノベーションは加速度を増しているから、ぼんやりしていると追いつけないほど新しい物が出てくる。
だけどその進化を楽しもうと思えば、そのスピードに乗って行くしかない。そのうち高級品と同じ品質のお酒が、スーパーの店頭に並ぶかもしれないね。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。