SOLA TODAY Vol.371
9月といえば、敬老の日がもうすぐやってくる。高齢化社会と言われる現代において、老人に関する問題がネットで取り上げられることがある。
そのなかでもよく見かけるのが、「キレる高齢者」という話題。産経新聞に寄せられた高齢者の投書に対して、多くの賛否両論が集まったという記事。
高齢者がキレるのは「社会が冷遇するから」 86歳男性の投書にネット困惑「社会云々はこじつけだろ」
2016年の犯罪白書によると、2015年に傷害事件を起こした65歳以上の高齢者は1715人、暴行事件は3808人と、いずれもここ10年で急激に上昇しているとのこと。事件総数との比較はわからないけれど、とにかく増加しているらしい。それは高齢者の絶対数が増えている影響もあるだろう。
だとしても、明らかにキレる高齢者が多いというのは、根も葉もないことではない。8月12日の産経新聞に、ある高齢者の男性が自分の体験談を投書した。
その男性は駅で友人と待ち合わせをしていた。ところが駅構内で迷い、5分ほど遅れて集合場所に到着。ところが友人の姿がない。携帯電話を持っていない男性は公衆電話を探して、自宅に連絡がないか確認した。
すると「先にレストランへ行っている」という電話があったらしい。たった5分も待てないのか、とその男性は怒り、そのまま家に帰ってしまった。キレたことを反省しているらしいが、自分がキレるのは社会が高齢者を冷遇するからだ、と述べている。
まずは公衆電話が撤去されていて、探すのに苦労したことに怒りまくっている。さらに駅の自動改札についても、IC専用が増えたことにより、切符を使っている自分はそれで時間を取られた。もっと高齢者にとって温かい社会であってほしい、とその男性は投書で結んでいる。
これに対して賛否両論が殺到したらしい。その多くは否定的な意見だったらしい。特に若い世代から。
黙ってそのままレストランに行けばいい、なぜ駅員に尋ねないのか、切符よりもICカードのほうが便利、プリペイド携帯でもいいから持っておくべき等の意見があった。
その一方でその老人に同情する意見もある。高齢者特有の精神不安定な面を考慮して、もう少し気持ちを理解してあげるべきだという内容だった。
この記事で大学教授の意見が紹介されている。高齢者の精神パターンとして、「加齢によって思慮深くなる『円熟化』と、感情の抑制が効かなくなる『先鋭化』の2つがあるらしい。歳をとって丸くなる人があれば、反対に怒りやすくなる人もあるのだろう。
ボクの意見としては、否定的な内容のほうに賛同する。高齢者にとって問題となるのは、不要な「プライド」だと思う。自分が今まで生きてきた人生に意味があると思いたいのは当然。そしてどんな人生も、決して無意味ではない。
だからと言って、そこから自分のプライドを肥大化させて、凝り固まった観念を死守しようとすれば弊害しかない。時代は常に変化を継続していて、新しい技術はとんでもないスピードで社会を変えている。
そうなると自分たちより年齢が下の人間に訊くしかない。つまらないプライドなんか捨ててしまって、スマホのことや、電子マネーについて訊いてみればいい。その謙虚な気持ちさえなくさなければ、それらがどれほど便利なものか理解できる。そして自分が時代から取り残されている、という気分を味わうこともないだろう。
ボクの知人で、絶対にガラケーを手放さない人がいる。どれだけスマホが便利で安く使えるかを説明しても、頑として抵抗する。本人がそれでいいのなら構わないけれど、時代との格差は開く一方だろう。ある臨界点を超えてしまえば、もう追いつこうという気力も無くなってしまう。
どんなことでも若い世代に尋ねたらいい、という軽い気持ちでプライドを手放すことで、かなり快適に過ごせるはず。少なくともこの投書の内容程度で、大切な友人との食事の機会を失くすことはないだろう。
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