10秒間だけの自由
神戸は未明に大雨警報が出てから、ずっと雨が降り続いている。それも半端じゃない量の雨。当然ながら小中学校等は休校だし、神戸市の多くで避難勧告が出ている。そしてその状況は関西一円にまで広がっている。
まじでヤバいと感じる雨の降りかた。神戸は傾斜地が多いので、土砂崩れ等が懸念される地域は広範囲になる。区役所の車が回っていたので、本当に危ない地域の人は避難されていると思う。ボクが住んでいるのはマンションの10階だから、自宅で過ごす分には問題ない。でもこの雨では、外出するのはちょっと考えてしまう。
明日になっても警報が出たままだったら、引きこもっているほうがいいのかも。それができるだけ、ありがたい立場だと感謝している。会社勤めの人たちは、この雨の中を通勤するしかない。せめて大雨警報が解除されるくらいの雨になって欲しい。
こんな雨が続くと憂鬱な気分になりがち。だけどそんな気分を吹き飛ばしてくれる。素晴らしい感動作品を観た。
『栄光のランナー/1936ベルリン』(原題:Race)という2016年のアメリカ、ドイツ、カナダの合作映画。1936年のベルリンオリンピックで、4つの金メダルを取ったジェシー・オーエンスという、黒人の陸上選手の実話を映画化した作品。
今年になって80本近くの映画を観ているけれど、今のところ今年のボクのナンバーワン作品。めちゃ感動して、何度も心が揺さぶられた。
1930年代のアメリカは、人種差別が今とは比べものにならないほど厳しかった時代。黒人選手がアメリカ代表になるなんて、想像することさえ難しい世相だった。長距離バスにさえ、有色人種用の座席が設けられていた時代だから。
そのうえ、世界中にはファシストの嵐が吹き荒れている。ナチスは1936年のベルリンオリンピックを、プロパガンダとして利用するつもり。だからアメリカではボイコット運動が主流だった。
この映画は、とにかくハラハラしてばかり。ジェシーが出した世界記録は、この後25年も破られなかったという天才的な陸上選手だった。貧乏な地域に育ち、妻と幼い娘もいる大学生。だけどスポーツ推薦を受けてオハイオ大学でラリーという最高のコーチと出会う。
終わりの見えない差別に耐えながら、ラリーとともにアメリカ代表の権利を得る。ところがアメリカはボイコットするかもしれない。最初のハラハラはアメリカがオリンピックに参加するかどうかというもの。
アメリカの参加が決まっても、次のハラハラがある。ドイツのナチスはユダヤ人だけでなく黒人も排除していた。だからオリンピックに参加することは、ヒトラーを容認することになる。ジェシーに対して黒人の住民組織は、ベルリンに行かないよう持ちかける。
そして最後のハラハラは、参加することなったオリンピックで、ジェシーはすべての種目に金メダルを取らないといけないプレッシャーをかけられる。出場する限りは、ヒトラーの体面を潰さなくてはいけない。ジェシーはとてつもない圧力に苦しむ。
スポーツと政治が分離できなかった時代における、アスリートたちの苦悩が描かれた作品。人種問題や政治問題等、不自由なことばかり。だけどジェシーは言う。「トラックで100メートルを走っている10秒間だけは、すべてのことから自由でいることができる」と。
ジェシーは期待されていたとおりに出場した3つの競技で金メダルを取る。さらにユダヤ人ということで直前に選手登録を外されたランナーに代わって、リレーに出場して4つ目の金メダルもゲットする。
そのアメリカ国籍のユダヤ人選手との約束、そしてライバルであるドイツ選手との交流、さらにコーチのラリーとの師弟愛に感動して、何度も泣かされた映画だった。これは超オススメの映画。スポーツ好きの人は、絶対に観るべき作品だよ〜!
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。