SOLA TODAY Vol.392
人間の思い込みはかなり根深い。一度意識に刻み込まれると、それを払拭するのに多大な労力を要する。
ましてや情報の提供者が公的機関や権威者だった場合、より強く刷り込まれることになる。昨日ネットで記事を読んでいて、そんな自分の思い込みに気づかされることになった。
スピード=悪とは限らない!? 人身事故の89%は時速40キロ以下で発生
5年に1度の運転免許更新のとき、必ず聞かされるのがスピードの出し過ぎ。悲惨な死亡事故の原因は、法定速度を超えたドライバーによって起こされると教え込まれる。
それは言われまでもなく、運転経験者なら実感として許容できるだろう。小学生でも理解できる物理法則が、その話の背景に存在するから。よく見せられる映像が、壁に激突したときの車の破損状況。
ダミーの人形を乗せ、時速40キロと60キロの衝撃のちがいを見せつけられる。だからスピードを出し過ぎると死にますよ、という結論になる。これはある意味事実だけれど、実際の交通事故はその事実に異を唱えている。
この記事から抜粋してみよう。
『「事故直前速度(※)別事故発生状況」のデータによると、人身事故の61%は時速20キロ以下で発生! 時速40キロ以下も28%で、なんと全体の89%が時速40キロ以下の低速域に集中している。反対に時速60キ超の事故は、たったの1%しかない』
人身事故の89%が、時速40キロ以下だと〜〜! マジで驚いた!
さらに抜粋してみる。
『死亡事故に限ってみると、時速20キロ以下が18%、時速40キロ以下が26%、時速60キロ以下が38%と、速度域が中速域に移行してくるが、より上の速度域を見ると、時速80キロ以下が11%、時速100キロ以下が5%、時速100キロ超となると2%にとどまっている』
マジか……。時速100キロ超えての死亡事故は、全体の2%でしかない。こんなこと免許更新のときに教えてもらってないよね?
こうなる理由が、この記事で考察されている。考えられるのは、人間の脳の仕組み。早いスピードで走っているほうが、人間の脳は刺激を受けて活性化するらしい。だから集中力や注意力が増して、事故に至ることが少ない。
逆に遅いスピードで走っているときは、意識が散漫になりやすい。とっさに判断できるほど脳が活性化していないので、想定外の事故が起きたときに死亡事故につながる可能性が高いとのこと。なるほど、なんとなくわかるような気がする。
実は日本の速度制限も見直されている。高速道路では110キロまで出していい、という方針が固まっていて、ほぼ法制化が決まっている。そのほうが事故が少ないと予測されているから。
たしかにスピードの出し過ぎは怖い。40キロで走っているときと、100キロで走っているときの、1回の事故に対する死亡率を調べたら、確実に100キロのほうが死亡率は高いはず。
だけど100キロで走っていると、事故を起こしにくいという結果が出ている。こうなると事故率と死亡率の勝負になってくる。事故率の低い高速運転を選ぶか、死亡率の低い低速運転に徹するか? これは自動車と旅客機の、事故率と死亡率の比較とよく似ている。
ベストなのは、脳を活性化した状態をキープしながら法定速度以内で走ることだろう。だから免許更新のときには、スピードの出し過ぎを注意されることになる。あの場で脳の活性化について語るわけにはいかないものね。
まぁ、どちらにしても、早く車の自動運転が実用化して欲しい。そうすれば、こんな問題を議論する必要がなくなる。とにかく、「スピード=諸悪の根源」という思い込みは捨てるべきかもしれない。
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