天使がくれた贖罪の機会
ボクはイギリス映画の大ファン。イギリスという舞台が好きなのもあるけれど、俳優さんたちの演技が本当に素晴らしいから。さすがシェイクスピアの国だと思う。そんなイギリス映画の真髄を見せてくれた作品を紹介しよう。ただしネタバレするので、ラストを知りたくない人は途中で離脱するほうがいいかも。
2021年 映画#60
『夜の来訪者』(原題:An Inspector Calls)という20215年のアメリカ映画。物語のほとんどがバーリング家のリビングで展開される。
バーリング家では長女シーラの婚約を祝う食事会が行われていた。シーラの父のアーサーは一代で財を成した実業家。紡績工場を営んでいる。母のシビルは特権階級意識の強い女性。弟のエリックは父の後継ぎだけれど、自身のなさで酒に溺れている。シーラの結婚相手は父のライバル会社の御曹司であるジェラルド。
そんな祝宴の夜に、グールと名乗る警部が訪れる。このグールを演じているのはデヴィッド・シューリスで、ハリーポッターのリーマスといえばわかる人が多いだろう。
目的はエヴァという女性が自殺したこと。グールはエヴァの日記を読んだことで、この家の人たちに確認したいことがあるとのことだった。ここからが想像を絶する展開になっていく。
詳細な部分は飛ばすけれど、エヴァを自殺に追い込んだのはこの日の祝宴に参加している5人だった。ところがそれぞれにまったくちがうシチュエーションでエヴァと出会い、彼女の人生を追い詰めていた。
発端は父がエヴァを解雇したことで、長女のシーラもブティックの店員に八つ当たりしたせいで彼女を失職させていた。それどころかシーラの婚約者であるジェラルド、母のシビル、そして長男のエリックまで彼女を苦しめていた。
もし誰かひとりでも良心を示していれば、エヴァは死ぬことがなかっただろう。意図したわけではないけれど、この5人の無慈悲な行動によってエヴァはお腹の子供と一緒に死んでしまった。
グール警部が去ったあと、5人は自分たちの保身に必死になる。このままでは社会の信用を完全に失ってしまう。ところが婚約者のジェラルドが不審を抱いたことで、グール警部という警察官が存在しないことがわかった。さらにその日に自殺した女性はいないことも判明した。
悪質な悪戯だと思った5人は、自分たちの悪行を忘れてホッとする。ところがとんでもないオチがあった。
その時点で、確かにエヴァは生きていた。だけどその日の夜、彼女はグール警部にいったとおりの方法で自殺した。そして彼女の遺体に寄り添うグール警部の姿は誰にも見えていなかった。
おそらくグール警部の正体は天使だと思う。どうにかしてエヴァの命を助けるため、その元凶となった5人に贖罪の機会を与えたのだろう。だけどグール警部が偽物だと知ったことで、彼らはすぐに行動を起こさなかった。
ラストシーンが印象的だった。若い女性の自殺を伝える電話が入り、警察が事情を聞くためにバーリング家に訪問すると告げるシーンで終わる。
ネタバレしてしまったけれど、知っていても驚きをもたらす作品だと思う。イギリス映画の真骨頂を経験したい人は、絶対に観るべき作品だろう。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
コメント (0件)
現在、この記事へのトラックバックは受け付けていません。
コメントする