クソ人間コンテストだな
映画や小説は登場人物の誰かに共感するもの。それが悪役であっても、ヒーローであっても、共感して応援することで物語の結末へと到達する。もちろん結末はハッピーエンドだけでなく悲劇に終わることもある。どちらにしても誰かの『味方』をすることで物語の世界に入る。
ところが主要人物の全員に共感できないという映画を観た。どいつもこいつもひどい人間で、まるでクソ人間コンテストのような映画だった。その実力は僅差なので、誰が勝利を得てもすっきりしないという作品だった。
2021年 映画#76
『ロスト・フロア』(原題:Septimo)という2013年のスペイン・アルゼンチンの合作映画。二人の子供が行方不明となった身代金目的の誘拐事件を扱った映画。
この映画のクソ野郎は3人いる。弁護士である主人公のセバスチャン。妻のデリア。そして同じマンションに住む警視のロサレスという3人。
セバスチャンの浮気が原因で、妻のデリアとは別居中。映画の舞台はアルゼンチンのブエノスアイレス。デリアは子供を連れて自分の出身国であるスペインに戻りたいと思っていた。だけどその書類にセバスチャンはなかなかサインしてくれない。
このあたりのアルゼンチンの法律がよくわからない。夫に原因があるのなら、子供を連れて実家のあるスペインに戻るのになぜサインが必要? ここで詰まると話が進まないので、とりあえず無視するしかない。
事件の当日はセバスチャンが子供を学校まで送っていくことになっていた。住居は7階。ちなみにこの映画の原題はスペイン語の『7階』を意味するそう。セバスチャンと二人の子供はエレベーターと階段に分かれて競走することになる。
ところがセバスチャンが1階についても子供たちは階段から降りてこない。その途中で誘拐されてしまった。そこでセバスチャンは同じマンションの住人である警視のロサレスに捜査を依頼する。そしてやがて10万ドルの身代金を要求する電話が入る。
とまぁこんな展開で物語が進む。最終的にセバスチャンが闇組織の資金を借りることで身代金を払い、子供たちは無事に戻る。セバスチャンは自分の責任を感じ、妻が作った書類にサインする。そして妻と子供たちがスペインに向かおうとするとき、ある証拠によって事実がわかる。
ここからがクソ人間コンテストの種明かし。まず前提としてセバスチャンがすべての原因を作ったクソ人間であるのは事実。浮気もそうだし、妻に禁じられていた階段の競走をやってしまったのも悪い。
ところが誘拐事件を計画したのは妻だった。警視のロサレスは人身事故を起こして賠償金に困っていた。だから10万ドルを条件に誘拐の手引きをやった。妻は被害者の母親のふりをしながら、夫にサインをさせたというもの、
金のために子供を誘拐したロサレスもクソなら、誘拐事件を起こしてまで夫にサインさせようとしたデリアもクソ。最初に書いたように、誰の味方もできない。気の毒なのは両親に振り回されている子供たち。
最終的にクソ人間コンテストに敗北したのは僅差で妻のデリア。さすがに誘拐偽装はまずい。刑務所行きは確実だから、子供たちとは面会でしか会えなくなる。結局は子供を置いて、ひとりでスペインに旅立つシーンで終わる。クソ人間コンテストの勝利者は、まんまとお金を手にしたロサレスということかな。
とにかく久しぶりに後味の悪い作品だった。ちなみに妻役を演じたベレン・ルエダという女優さんをどこかで観たことがあると思った。調べてみると、『永遠の子どもたち』という映画で主演していた女優さんだった。めちゃ怖くて気持ち悪いホラー映画だったので、きっと覚えていたんだろうなぁ。
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