恋愛が介さない男女の友情
今日は全国的に10月の気温らしく、神戸も最高気温が23度を越えた。自宅から見える六甲山はようやく色づき始めたところで、今月の下旬ころには見頃になりそう。今年の大掃除は終わったことだし、ミューナの通院も火曜日に無事終了。それで陽気に誘われて、午前中に妻とプチ散歩に出かけた。
小一時間ほどの散歩だったけれど、汗ばむほど暖かい。それでも秋は確実に近づいていて、こんな美しい紅葉を発見。
行き道は背中にあったので気がつかなかった。帰り道になって美しいグラデーションを見つけて感動。自宅から歩いて15分ほどでこんな紅葉を見れるなんて最高。明日は全国的に雨になりそうなので、今日は全国の行楽地が賑わっているだろう。
さてそんな美しい紅葉のような爽やかな気分になれる小説を読んだ。4人の男女の友情を描いた作品で、苦しい現実世界でもがきながらも、4人の男女が前に進んでいくという物語。
2022年 読書#105
『新しい星』彩瀬まる 著という小説。直木賞候補となったことでチョイスした作品。物語を動かしている4人の男女は、大学時代の合気道部の仲間。そんな彼らが社会人となってからアラサー、そしてアラフォー時代の出来事が時系列に語られた作品。7つの短編で構成されていて、それぞれに語り手が変わってくる。
『新しい星』
『海のかけら』
『蝶々ふわり』
『温まるロボット』
『サタデイ・ドライブ』
『月がふたつ』
『ひとやすみ』
『ぼくの銀河』
という7つの短編。それぞれに登場人物たちの出来事が語られ、時間も少しずつ進んでいく。
青子:結婚して娘をもうけるものの、早産でかつ新生児のうちに子供を亡くす。それがきっかけで夫と離婚し、子供の幻を抱えたま一人で生きようとしている。
玄也:職場でのいじめが原因で引きこもりになってしまう。だけど友人たちの助けを得て、少しずつ社会に復帰しようとしている。
茅乃:結婚して娘が生まれ、幸せに暮らしていた。だけで乳がんを発症してしまう。合気道は彼女が最も強かった。
卓馬:税理士で二人の子供がいる。順風満帆な生活に見えたけれど、コロナによって夫婦の不和が明確になってしまう。
という4人が語り手になった短編で構成されている。まだ1年ほど前に出版された小説なので、ネタバレはやめておこう。物語を通じて描かれているのは、目に見えないマイノリティの人々。この4人を通じて、社会で阻害されている人たちの存在が浮き彫りにされている。
ただこの物語に爽やかな風が流れているのは、この4人の男女にまったく恋愛感情が存在しないこと。それぞれに相手を見つけて結婚したりで、大学時代の思い出に関しても4人に恋愛関係があった形跡はいっさいない。合気道は男女でも組み合うのに、そうした性的な空気がまったく存在しない。
結局物語の最後まで、この4人の友情は貫かれている。それがいたって気持ちいい。普通はドロドロしそうなのに、この4人には常にピュアな友情しか介在していない。もしかして本当は何かあったのでは? という疑問さえ感じなかった。そこまで著者の登場人物に対する姿勢が徹底している。
こんな友情があれが本当に素敵だなぁ、と本気で感じられる物語だった。
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