ネガティブ感情は悪者じゃない
人間の感情は振り子のようなもの。ちょっとしたことで落ち込んだり、なんでもないことで元気が出たりする。まさに振り子のようにポジティブとネガティブを行き来するので、自在にコントロールすることが難しい。
でもその振り幅こそが、ボクは人間の魅力だと思っている。振り子が動くままに感情を受け入れている人は、ある時は怒っていたり、泣いていたりすると思えば、前向きに集中していたり、はしゃいでいたりする。やってくる感情の波に抵抗せず、ありのままに感じているのだろう。それは物語のキャラとしても人を惹きつける要素だと思う。
ただネガティブな感情は辛い。だからできるだけ避けようとして、一般的な人はネガティブにならないよう必死になる。これは振り子の揺れを止めているのと同じで、ポジティブな方向への動きも制止させてしまう。つまり感情を抑え込んでいる状態で、可もなく不可もなくという雰囲気。ちょっと面白くない。
そうなるのは、ネガティブが「ダメ」だという思い込みが強いから。ネガティブ感情を避けようとすることで、楽しむこともできなくなってしまう。でも大切なのはバランス感覚だと思う。ネガティブに偏るのも、ポジティブ信仰に走るのも、そして感情を抑制して振り子の動きを止めてしまうのも、感情のバランスをかえって乱してしまうことになる。
ポジティブにも、そしてネガティブにも役割があるとボクは思っている。どちらも必要だからこそ、人間はそうした感情を経験するはず。だから感情のバランスを整えるためには、まずネガティブの役割を認知することだろう。ポジティブは比較的に受け入れやすいから。
そんなネガティブ感情の役割を感じさせる研究結果が発表されている。
ネガティブな気分の時ほど、言語の処理能力が上がり矛盾や誤りを見つけやすいという研究結果
リンク先の記事は、アメリカのアリゾナ大学の研究チームが公表したもの。研究内容はリンク先を見てもらうとして、結果だけを紹介しておこう。
ネガティブ感情は、脳の分析思考を高めるという結果。脳の働きは言語処理に関して、感情と結びついているらしい。ネガティブな気分の時と、ポジティブな気分の時、機能している脳の部分が異なるとのこと。
これはなんとなくわかる。おそらく文章を書くという行為に必要なのはポジティブ感情だと思う。小説やブログを書いていると実感できる。落ち込んでいる時には文章が書けない。反対に気持ちがポジティブになっている時は、勢いでどんどん筆が進む。
ところが文章の校正や推敲を行う場合、ネガティブ感情の方が効果的だという結果が出ている。矛盾した文章を研究の参加者に読ませた場合、ネガティブ感情へ誘導したグループが間違いや矛盾点をより多く指摘したらしい。じっくりと見直すという機能がより強く働いていたとのこと。
これはなかなか面白い。もし自分の文章を推敲するときは、ちょっとネガティブになっている時の方がいいのかも。だったら編集者という仕事をしている人は、ネガティブ感情が強い人向きなのかな?
この研究結果を見ると、ネガティブ感情が悪者じゃないことがわかる。必要だから存在している。要するに最初に書いたように、大切なのはバランス感覚だと思う。ネガティブ感情を悪者にせず受け入れることで振り幅が増し、より深いポジティブ感情を体験できるんだと思う。その揺れを楽しめることが人生の醍醐味であり、有意義な経験をもたらしてくれるのかもね。
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