間違いを選ぶしかない苦悩
昨日に引き続き、今日の神戸も黄砂でかすんでいる。偏西風が吹き付ける西側の窓を拭いた妻が絶句していた。黄砂と花粉で雑巾の色がとんでもないことになっていたそう。中国に苦情を言ってもどうしようもないけれど、本当に困ったものだ。
さて、とても印象深い映画を観た。主人公の少年の心を想像すると、胸が痛くなるほど苦しい。正しいことが何かはわかっているのに、それができないことに苦悩する様子が切なかった。
2024年 映画#71
『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』(原題:Armageddon Time)という2022年のアメリカ映画。主人公は12歳の少年のポール。祖父役として写真のアンソニー・ホプキンス、そして母親役をアン・ハサウェイが演じている。この二人の共演を見るだけでも値打ちのある作品。
物語の時代は1980年。この映画は監督と脚本のジェームズ・グレイの実体験を元にした物語とのこと。ポールは12歳の6年生。新学期の初日にジョニーという黒人の少年と友人になる。ポールは画家になることが夢で、学校の勉強にあまり興味がない。クラスでも少し浮いた存在だった。
同じく黒人ということで差別を受けていたジョニーも浮いていた。それで二人は仲良くなる。ジョニーに両親はいなくて、祖母と二人で暮らしている。
ある日、ジョニーは知り合いからドラッグを手に入れた。それでポールと二人でトライすることになった。ジョニーも違法な薬物だとは知らず、ただ楽しく笑えるというタバコだと思い込んでいた。トイレで笑い転げている二人は教師に見つかってしまう。
このことを重くみた両親によって、ポールは兄が通っている私立学校に転校させられる。そしてジョニーとは2度と会わないように言い聞かされる。まだ黒人差別が現在よりもあからさまだった時代。ポールも必死で私立学校の友人に馴染もうとする。だからジョニーが接触してきてもつれない態度を取るようになった。
でもポールはそんな生活に限界を感じていた。自分らしくいられない。そんな時、ジョニーが助けを求めてきた。祖母の健康が悪化したことで、施設に預けられることになった。ジョニーの夢は黒人で初めての宇宙飛行士になること。なのにこのままではその夢は叶いそうにない。
一方ポールも学校の勉強に身が入らず、絵ばかりを描いていた。そして自分の転校が両親に経済的負担をかけていることを知り、この世界から逃げ出したいと願っていた。そこでポールはジョニーにあることを持ちかける。私立学校のパソコンを盗んで転売する。そしてそのお金でフロリダへ移住しようという計画。
そしてジョニーは宇宙飛行士、ポールは画家を目指す。もちろん現実離れした子供の夢でしかない。でも本当に実行して二人は逮捕されてしまう。ここからが切ない。ポールは全て自分の計画だとして事実を警察に話した。けれどもジョニーはポールが関係ないと証言する。どうせ黒人に未来はない。だからポールが少年院に送り込まれるのを防ごうとした。
さらに駆けつけた父によって決定的なことが起きる。父は担当の警察官と知り合いだった。それで二人は密談して、ポールだけ釈放するようにはからった。最終的にポールは強烈な罪悪感を抱えながら、ジョニーに別れを告げる。とても切ないシーンだった。
その後の父との会話が印象的だった。父は黒人のジョニーだけが裁かれるのは不公平だと言い切った。けれどもお前を助けるためには仕方なかったと話す。この世界にはどうしようもないことがあるのは事実。それでも生きていくしかない。その不公平をお前が背負うなら、これからの生き方を変えていけばいいと話した。そしてポールはその事件以後、学校での勉強に本気で取り組むことになる。
切ないけれど素敵な映画だった。ポールの父は体罰をする厳しい人物。でも心からポールを愛しているのがわかる。母親も必死で息子に愛情を注いでいる。そしてポールの祖父が最高だった。写真を見ているだけでも祖父の愛情が伝わってくる。誰もがいい人ばかり。けれども人種差別と経済格差という避けられないものが存在していた。様々なことを感じさせてもらえる、とても素晴らしい人間ドラマだった。
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