新聞社の実態に戦慄した
今日は久しぶりにクソ暑いです。少し湿度が上がったのと、風が弱いので不快指数が増しています。間もなく7月が終わりますが、今のところ夜に関しては快適に過ごすことができました。でも今夜はちょっと心配。今年の夏初めての寝苦しい夜になるかもしれません。
ここのところ、日が落ちると気持ちの良い風が吹いています。その風が夜明けごろまで続くのですよね。今日も風が吹くことを期待して、日暮れを待とうと思っています。今日はミューナも暑そうにしています。
さて昨晩に読了した本です。あくまでも小説なのですが、新聞社の実態を暴露した本だと言っていいでしょう。
『小説 新聞社販売局』幸田泉 著という本です。
著者は大手の新聞社で記者をされていた方で、2014年に退職されてからこの本を出版されたようです。この本の書評を見たときに関心を持って、このブログでも紹介したことがあります。ようやく読むことができました。
小説なので当然ながらフィクションです。記者だった主人公の神田は、編集局長とトラブルを起こして販売局へ飛ばされます。新しい仕事は、地域の新聞販売店と新聞社をつなぐ、担当員という仕事です。
担当員の最も重要な仕事は、新聞販売店を育てて購読部数を伸ばすことです。新聞販売店は自営業ですから、生活が成り立たないとやってくれる人はいません。休みだってほとんどない仕事です。家族の誰かが死んでも、新聞配達を休むことができませんからね。
私は高校生のころに新聞配達のアルバイトをしていましたので、何も知らない方に比べたら新聞販売店の実態を多少は知っています。いつも気になっていたのは、かなりある残紙です。配達する数より多めの新聞が新聞社から届きます。配達が終わっても、多くの新聞が残っていました。
この小説のテーマは、その残紙です。別の言葉で言えば「押し紙」と呼ばれています。
新聞販売店の収入は、大きく分けて2つあります。当然ながら一般の家庭から集金する新聞講読料がその一つです。もう一つはチラシを新聞に挟み込むことによる手数料です。新聞1部につき何円という形で、広告主が支払うのです。
支出の大きなものは、当然ながら新聞社に支払う新聞の原価ですね。そしてアルバイトの給料や、配達用のオートバイの費用、建物を借りている場合だったら家賃も発生します。その収入と支出の差額が、新聞販売店の収益になります。
ところが近年は新聞の購読数が減っています。私は神戸に引っ越してから新聞をとっていません。ネットで十分にニュースを知ることができます。ところが新聞社は購読数が減ることを極端に嫌います。ではどうするのか?
新聞販売店に押し付けるのです。わかりやすく言えば、実際の購読者数が100部だとすると、新聞社は200部の新聞を販売店に送ります。それで偽物の購読者数を維持しているのです。平均すると新聞販売店に配送されているほぼ半分近くが、そうした購読者のいない新聞なのです。それを押し紙と言います。
もちろん新聞社は否定していますが、実態はそうではありません。私が高校生のころでも感じたほどですから、バブルがはじけた現状において、何もないわけありません。この小説もそうした実態を告発したものです。
お客さんから徴収できる新聞代金が半分であっても、新聞販売店は送られたきた分量の金額を支払う必要があります。とんでもなく理不尽な話です。そこで新聞社は補助金という名目を作り出して、なんとか生活をしていけるようにしてきました。生かさず殺さずです。
でも補助金にも限度があります。そして新聞販売店の収入に一つである新聞広告を出す企業が減っています。ネットの広告のほうが効果的ですから。でも新聞社は押し紙を減らすことを認めません。そうすると支払いのできなくなる新聞販売店も出てきます。
そうなると新聞社の収入に関わってきます。そこで販売局の担当員にしわ寄せがいきます。自分が担当する販売店の支払いが足らないと、その分を担当員が個人的に補填するとのこと。もうビックリしますよね。もちろん表向きは立て替えは禁止されています。でも上司は当然のように担当員に指示します。
この小説は主人公の神田が販売局の実態を知り、その闇と戦った物語です。500万円を超える立替金を抱え奮闘します。最後は編集局に戻ることで終わりますが、新聞社の実態はそのままです。新聞社が購読者数と発行部数を合致させる勇気を持てないのです。
現状のままでは新聞社は斜陽産業になっていくと思います。とにかく衝撃的な小説でした。ある意味ノンフィクションとして読むことができると思います。もし新聞をとっておられる方がおられたら、一度この小説を読んでみてください。自宅まで新聞が届く実態を知ると、かなり驚くことになると思いますよ〜!
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