SOLA TODAY Vol.258
先日はフランスの新大統領が決まり、昨日は韓国でも大統領選挙が行われた。フランス大統領が決定した直後に株価が上昇したように、一国の元首の入れ替わりは全世界に影響を及ぼす。
なかでもいまだに大きな影響力を持っているのがアメリカ大統領。トランプ大統領の就任は、日本だけでなくヨーロッパにも激震をもたらしている。
エストニアの住民は、ロシアの侵攻に備えて軍事訓練を繰り返す「その時が来たら、準備はできている」
ヨーロッパのバルト海東岸に面した、バルト三国のひとつであるエストニアの記事。対岸にスウェーデンをのぞみ、東にはロシアが国境を接している。
大国にはさまれたエストニアの歴史は、侵略という言葉を切り離して考えることはできない。13世紀にはデンマーク、16世紀にはスウェーデンに占領されている。18世紀にはロシア領となり20世紀になって独立するが、第二次世界大戦が終わって今度はソ連に占領される。
1990年代になってソ連の崩壊とともにまたもや独立して、現在は欧州連合の一員としてNATOに加盟している。つまりロシアがもし攻めてきたら、NATO軍が黙ってはいない。
だがトランプ大統領はNATOとの関係を見直すと言い始めた。それなりの負担をしなけれれば、アメリカはバルト三国を助けないとのこと。実際にはもっと柔らかい言い方をしているが、言っている内容は同じこと。
この記事である女性が取り上げられている。普段は販売員として働き、ふたりの子供を育てている。だけど定期的にライフルを持ち、軍事演習に参加している。日本では考えられないことだろう。
「エストニア防衛連盟」(EDL)という予備部隊が存在していて、エストニアの成人のうち2万5000人が志願している。人口が130万人の国でこの人数は、国民が抱えている危機感の表れだろう。
その危機は決して妄想じゃない。2014年にウクライナに介入してロシアがクリミアを併合した直後、EDLに志願する人が大幅に増えたらしい。ウクライナの出来事が、決して人ごとじゃないからだろう。ロシアの恐ろしさは、この国の人たちのDNAに刻まれているのだと思う。
ところがエストニアという国自体、決して一枚岩じゃない。ロシアの影響は色濃く、人口の4分の1はロシア系の住民。それゆえロシアによる併合を否定しない人も大勢いる。まかりまちがえば、内戦になりかねない。
この記事にはその女性を通じて、今のエストニアの実態が詳しく書かれている。歴史的な背景はまったくちがうけれど、日本人のボクたちにとって、決して人ごとじゃないと感じた。
トランプ大統領は選挙中、日本が在日米軍に対する負担を増額しないと撤退する、ということを言っていた。これは先ほどのNATO軍と同じ意味合いを持つ。今のところ落ち着きを見せているが、沖縄の基地問題はまだまだ根が深い。
さらにエストニアに対するロシアのように、日本には中国という不気味な隣国がある。以前のブログでも書いたけれど、中国政府はチベットやウイグルの人たちに対して、明らかな侵略と虐殺行為を行なっている。そしてその視線は、常に尖閣諸島に注がれている。
あまり報道されないが、ほぼ毎日、尖閣諸島の接続水域付近を中国海警局の船が航行している。海上保安本部がその都度警告しているが、中国は動じない。
日本がエストニアのような歴史を経験していたら、今の状況ならEDLのような組織ができているかもしれない。だけど日本ではありえないこと。ほとんどの人が平和ボケの雰囲気にどっぷりと浸かっている。これは致し方ないことなのかもしれない。
日本に徴兵制を復活させろとか、予備役を導入するべきだと言っているんじゃない。むしろボクは反対の立場。
だけど今のままでいいのか、という危惧を感じているのはたしか。同じ2017年という時代を生きている他国で、真剣に外国の侵略に備えようとしている人たちがいる。そのことを対岸の火事として傍観するのか、自分たちのこととしてとらえるのか、そのちがいは大きいように思う。少なくとも、こうした実情があることを知っておくべきだろう。
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