SOLA TODAY Vol.265
昨日ランチのパンを買いに行ったときに感じた。レジをされているのはお店の奥さんだと思うけれど、パンを見てすぐにその名前を口に出し、金額をレジ打ちする。お店として当たり前だけれど、意外と大変なこと。40年ほど前にコンビニアルバイトをしていたボクだから、よくわかる。
家族経営的なお店ならそれでもどうにかなるだろう。だけどアルバイトを雇わなければいけないような店舗なら、店員にパンの種類と金額を覚えてもらうのに、多くの時間と労力が必要になる。ところが兵庫県のある会社が、その悩みを解決した。
「すごすぎる」――地方のパン屋が“AIレジ”で超絶進化 足かけ10年、たった20人の開発会社の苦労の物語
今年の４月、ある道の駅のパン屋で驚く光景を見た人が、ツイートをして話題になったらしい。焼きたてのパンをレジに持っていくと、専用のマシンが瞬時にパンの種類を判別して合計金額を出す。時間はわずか１秒ほど。
そのマシンの名前は「BakeryScan」という。2008年から開発を始め、10年近く苦労して完成されたもの。自家製パンは工場製品とちがってバーコードやRFIDをつけることができない。そのうえ同じパンでも、見た目が同じだけで微妙に焼き上がりの形状がちがってくる。
だからパンの種類ごとの『特徴量』をスコア化することで、コンピュータに読み込ませる技術を開発した。よく利用されているディープラーニングというAIだと、最高スペックのコンピュータを使っても登録に一晩かかる。
ところが人間があらかじめデータをスコア化してからAIに読み込ませることで、新商品の登録がアルバイトの店員でも２分で可能となった。お店によってパンの種類がちがうから、個人経営の店舗にとってかなり使い勝手がいい。
それでも当初はかなりバクが出たらしい。複数のパンをひとつとして認識してしまうことがある。そこでコンピュータではなく、タッチパネルの映像で重なったパンを、人間の手でスワイプする方法が考案された。見た目で重なっているパンを動かせばいいだけなので、子供だってできる。
パンの種類を完璧に覚えているベテランの店員さんがいる店では、最初はあまり反応がなかった。でも道の駅のように大勢の人が訪れ、短期のアルバイトを使わなくてはいけない店舗では、徐々にこのマシンが使われている。これからはさらに広がるだろう
これは本当に便利だし、すごいことを考えたなぁと感心した。設備投資に費用はかかるけれど、軌道に乗れば誰でもできる。昨日今日来たばかりの店員さんでも、安心してレジに立ってもらえる。ベテラン店員に高給を払うことを考えたら、人件費の節約にもなるだろう。
このシステムは、神社でも歓迎されているらしい。お札やお守りは、焼きたてパンと同じでバーコード等をつけられない。アルバイトも出入りが激しい。だからこのシステムを使えば、お札のちがいや値段を覚えてもらう必要がない。誰でも販売することができる。
これからの時代を象徴する話題だよね。人間の労働力がAI等に奪われるということは、ずっと言われて来た。でもその多くは、誰でもできる単純労働だという認識が根強いだろう。
だけどこの記事を読むと、ベテランの店員がやっている仕事でさえ、簡単にAIがやってのける時代が来たということ。商品の種類や値段を覚えるのが得意でも、もやは何のアドバンテージを持たない。
やっぱりこれからの人間は、自分のやりたいこと、自分しかできないことに特化していくしかない。そんなことを切実に感じさせてもらえた記事だった。
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