ネット選挙に立ちはだかる壁
今年、試しにマイナンバーカードを作ってみたことで、強く感じたことがある。それはネット選挙が技術的に可能だということ。
マイナンバーカードは今年の秋から健康保険証として使えるようになった。医療機関に顔認証できる専用の装置が必要になるけれど。だとしてもネットで申請したマイナンバーカードが個人認証として利用可能なことが証明された。
スマートフォンでマイナンバーカードのサイトにログインする場合、カードの ICチップをスマートフォンで読み取り、暗証番号を入力することで個人認証が可能となる。この方法を使えば、少なくともマイナンバーカード所有者限定ならネット選挙が可能だと思う。
オンライン選挙が可能になれば、若い世代を中心として投票率が大幅にアップするはず。それが困る現職議員もいるだろうけれど、民意の反映という観点からすればメリットしか見えない気がする。
ところがある記事を読んで、ネット選挙はまだ時期尚早かもしれないと感じてしまった。
オンライン投票は現時点でも予見可能な未来でも「実現不可能」である
少し長いけれど、ネット選挙のデメリットがわかりやすく書かれていた。リンク先の記事を読む限り、たしかにネット選挙には立ちはだかる大きな壁がある。そのことを認めざるを得ない。
よく言われるのはセキリュティの問題。これはネット全般に言われることなので、対応策は取れると思う。暗号化の技術も進化しているので、システム構築の際にある程度は対処できると思う。
気になったデメリットとして、ネット選挙は再集計が不可能だということ。紙による投票だと、もう一度集計をやり直すことができる。微妙な票差で当落が分かれたり、異議申し立てがあったときの再集計が、ネット選挙だと事実上不可能。誰が誰に投票したかなんて、デジタル上にログは残されないはず。
最大のデメリットだと思ったのが、投票の秘密が守れないということ。現在の選挙だと、期日前でも投票日でも、用紙をもらって専用のブースで記入する。例えば所属団体等のしがらみがあっても、それを無視して自分の思う人物に投票することができる。無記名だからね。
だけどネット選挙になると、意外な盲点があらわになる。極端な例だけれど、ある団体が所属する人たちをどこかの場所に集めたとしよう。考えられるのは高齢者の人たち。その人たちにネット投票を登録させることで、その場で誰に投票したかをチェックできる。投票方法の指導という名目を使って。
ひどい場合は、投票の強要ということが発生する可能性もある。組織票を動かす団体は、これくらいのことをやりそうな気がする。ある意味成りすましのようなもの。このデメリットはかなりヤバい気がする。
そしてリンク先の記事に書かれている最悪のデメリットとして、ネット選挙はケチをつけやすいということ。陰謀論によってアメリカの国会議事堂が襲われた事件や、選挙の不正を名目にしたミャンマーのクーデターのようなことが起きる可能性が高くなる。
もしそれを防ごうとしたら、ネット選挙において誰が誰に投票したのかわかるという、事実上の記名投票にするしかない。それならいまのままでいいという人が圧倒的多数になるだろう。
ネット選挙を実施するためには、誰もが納得できる仕組みだけでなく、ハッキングに強い完璧なシステムを構築しなければいけない。そう考えると、ネット選挙の道はまだまだ遠いとしか言いようがない。残念だけれど仕方ないよね。
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