人間はラベリングに影響される
日本では古来から言霊を意識している人が多い。それは言霊信仰というものへと成長して、いい意味でも悪い意味でも使われている。悪いものの代表といえば、戦争中の軍部。敗戦に繋がる言葉を徹底して避け続けた結果、戦況に関する現実を直視しなかった。それゆえ大勢の命を犠牲にしてしまった。
霊的な意味での言霊が実際に存在するかどうかはわからない。でも人間の心理が言葉に大きく影響されるのは事実。ラベリングに関する最新の研究結果がとても興味深かった。
リンク先の記事は東京大学で実施された実験結果をまとめたもの。匂いに対する言葉のラベリングの影響を調べている。
実験の詳細は記事を見てもらうとして、結果だけを紹介しておこう。二つのミントに香りが用意された。どちらも同じもの。
それで二つともミントだと説明された治験者と、一つはミントでもう一つはユーカリだと説明された治験者に分けた。その二つの匂いの違いを主観的に判断するというもの。二つともミントだと説明された人は、同じだと答えた。
ところが一つがユーカリだと説明された人は、その二つの匂いに違いがあると感じている。これは単なる思い込みだけではなく、fMRIによって脳にも明確に反応が出ていることがわかった。「ユーカリ」という嘘のラベリングを聞かされただけで、人間の脳は違うものだという認識をしていたということ。
もしかすると言霊というものは、言葉そのものの霊力というより、言葉を受け取った人間が自分自身に影響を与えている現象なのかもしれない。この事実から感じるのは、言葉を軽率に扱ってはいけないということ。他人だけでなく自分も傷つけてしまう可能性がある。あるいは次の行動に影響を与えてしまう。
例えば何か新しいことを始めようとして、不安な気持ちを「言葉」として発してしまったとしよう。それを自分の耳が聞くことで、ラベリングの影響を受けてしまうかもしれない。逆に肯定的な『言葉』を発することで、根拠のない自信を持って暴走してしまう可能性もある。ポジティブだからなんでもいいとは限らない。
ラベリングによる影響を回避するとしたら、言葉をニュートラルにする必要があるのかも。次の行動にブレーキをかけることなく、同時に能力を無視した暴走を抑制する言葉がベストだろう。そこでボクなりに考えてみて、思いついた言葉がこれ。
『何事も、やってみなければわからない』
この言葉は否定でも肯定でもなく、未来の結果を留保している。けれども目標に向けて次の一歩踏み出すモチベーションになっている。人間がラベリングに影響されるとしたら、自分にかける言葉も慎重に選ぶべきかもしれないね。
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