歴史を学ぶ最良の入り口
ボクは歴史が大好き。現代人は過去の歴史から多くを学べる。歴史は社会学や心理学というような学術的な領域を超越して、人間という存在を鳥瞰的な視点で見ることができる。
例えば真実だと思われていた事実が、後日の研究によって180度ひっくり返ることなんていくつもある。権力者というのは都合のいいように歴史を書き換える。そんな嘘の歴史でさえも、人間という謎の多い魅力的な生き物の素顔を語ってくれる。
だけど学校で習う歴史はつまらない。あれでは歴史に興味を持ってもらうどころか、かえって歴史嫌いにしてしまう。幸いにもボクはそんな学校の歴史教育の影響を受けなかった。なぜなら歴史を学ぶための最良の入り口を知っていたから。
それは歴史小説。物語を通じて歴史を知ることで、その時代の人物たちがいまの時代に生き生きとよみがえってくる。ボクの父親はそんな歴史小説の大家である吉川英治の大ファンだった。だから自宅に著者の本がいくつもあった。だから小学生の高学年のころには、そうした本を手にしていた。
漢字は難しいし、当時は理解できないこともあった。だけどやはりそこは小説なので、物語が成立している。子供なりに読み進めていくことで、その時代の空気を実感することができた。そうなればしめたもの。学校で教科書を読んでいても、その物語の登場人物がリアルに語りかけてくる。
そんなボクの歴史好きの入り口となった小説を、久しぶりに読了した。
2021年 読書#126
『私本 太平記』吉川英治 著という小説。太平記というのは鎌倉幕府の滅亡から、南北朝の混乱、そして室町幕府の成立まで描いた古典。もちろんそれ以外にもこの時代について書かれた古典はある。そんないくつかの古典、文献、史料を集めて物語として著者がまとめた作品。
ボクが初めて読んだのは、小学校の高学年だったと思う。とにかく長い。昭和34年ころ、新聞小説として3年以上を費やして書かれた小説。大人になったいまのボクでも読了するのにかなりの時間を要した。
電子書籍をダウンロードして、1日に特定の区切りごとに読んでいた。詳しくは記憶してないけれど、おそらく2年以上はかかったと思う。足利尊氏の青年時代から物語が始まり、彼の死までが語られている。
もちろん後醍醐天皇、楠木正成、新田義貞等の人物も詳細に描かれている。ボクが好きな武将は婆娑羅大名と呼ばれた佐々木道誉。彼の日和見主義な世渡り術は、なかなか真似できるものじゃない。その他にも魅力的な登場人物をあげたらキリがない。
もちろん小説だから、これは著者である吉川英治さんのフィクションでもある。史実もあれば創作もある。時代小説を読むときに意識することは、あくまでもフィクションであり、この時代に関する著者の歴史観が記されているということ。それを忘れてはいけない。
だけど歴史を学ぶ入り口としては最良だと思う。この物語をきっかけとして、歴史書や学術書を読むことができる。ボクは電子書籍になっている『永遠なる玉響』という小説を書いたとき、南北朝に関するあらゆる資料を読んだ。
だけどこの小説の知識があるから、登場人物たちのイメージが強い助けてなって読み進むことができた。その結果として、小説とはちがう事実を学ぶこともあった。とにかく小説を入り口にしておけば、その時代について興味を持つきっかけになる。
いまは同じ著者の『三国志』を久しぶりに読み返している。これだって2年くらいはかかるだろう。同じくボクの戦国時代好きのきっかけとなったのは『新書太閤記』だった。ちがう著者でいえば、幕末の歴史に興味を持ったきっかけは司馬遼太郎さんの『龍馬がゆく』だからね。
ということで南北朝時代の長い旅が終わった。明日からは同じ著者の『新・平家物語』を再読する予定。また2年くらいはかかるかな? 久しぶりに大好きな平清盛に会えるので、ちょっとワクワクしている。
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