真実に近づくワクワク感
明日からゴールデンウィーク。と言ってもボクは常に平日モードなので、大長編になってしまった新作小説の推敲中。いつもは完成までに投稿先を決めて内容を詰めていくんだけれど、今回は考えていた投稿先とタイミングが合わなかった。
だから完成してもしばらく温存しておくしかなさそう。9月までには次の新作を書きたいので、遅くてもゴールデンウィーク中にはこの新作小説を完成させる予定。だから当分はパソコンとにらめっこが続く。
こんなときに気晴らしになる素敵な小説がある。時代小説なので、頭の切り替えにもってこい。シリーズ作の第2弾を読み終えて、ボクはすっかり大ファンになってしまった。
2022年 読書#41
『こいしり』畠中恵 著という本。『まんまこと』シリーズの第2弾の作品で、ドラマ化にもなっている人気時代小説。
主人公は高橋麻之助という神田の町名主の後取り息子。町名主というのは家庭裁判所の裁判官のような役どころ。奉行所で扱えない住人たちのもめ事や争い事に決着をつけるという仕事。シリーズタイトルの『まんまこと』というのは『本当のこと』という意味で、真実を追求していく物語。
といっても深刻な内容ではなく、どちらかといえばコメディタッチで物語が進んでいく。第1弾と同じく今回も6つの短編が収録されていて、連続ドラマのように内容がつながっていく。
レギュラーは麻之助の親友である八木清十郎と相馬吉五郎。清十郎は隣町の町名主の後取り息子だったけれど、この作品で父親が他界するので町名主となっている。女たらしというキャラ。吉五郎は反対に硬派で、同心見習の武士。
そして由有という麻之助の初恋相手(2歳年上で清十郎の父親の後妻)と、第1弾では許嫁だった寿ずは、この作品で麻之助の妻となっている。この5人がレギュラーというところ。
『こいしり』
『みけとらふに』
『百物語の後』
『清十郎の問い』
『今日の先』
『せなかあわせ』
という6つの物語。それぞれに起きる事件が複雑でユニーク。だからこそ面白い。そして予想外の展開になっていく。それは主人公たちの活躍によって真実が明らかにされていくから。徐々に真実へ近づいていくというワクワク感が、このシリーズにハマる理由だと思う。
どれも面白いけれど、印象的なのは『せなかあわせ』という作品。新婚の麻之助は、いきなり妻の寿ずに離婚したいと言われる。その理由はある手紙だった。内容を見ると、こっそりと会って駆け落ちしたいという内容。その相手の名前の一部が消えているが、どうも由有(おゆう)という名前っぽい。
つまり寿ずは、夫の初恋相手に嫉妬したということ。濡れ衣を着せられた麻之助は、妻と一緒になってその手紙を書いた主を探すという内容。これがなんとも切ない物語だった。書いた本人はすでに他界していて、その想いが相手に伝わったかどうかわからないというもの。
夫婦喧嘩に笑いながらも、ほろりとさせる素敵な物語だった。どの作品もこうした工夫が凝らされていて、まだまだ続くこのシリーズを当分は楽しめそう。江戸時代の町人の生活をリアルに感じられる。とても素敵な作品だと思う。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
コメント (0件)
現在、この記事へのトラックバックは受け付けていません。
コメントする