ハイになりたい心理の闇
何気なしにネットの記事を見ていて、思わず二度見した見出しがあった。それは「ホイップクリームを買うために身分証明書が必要」というもの。
頭が????になった。でも記事を読んで、その闇の深さに考えさせられることになった。
NYではホイップクリームを買うために身分証明書が必要。その理由とは
ニューヨークではホイップクリームを買うのにタバコやお酒と同じく、年齢を証明する身分証の提示が必要となる。対象となるのはスプレー缶入りのホイップクリームとのこと。
日本ではあまり見かけないけれど、洋画ではホイップクリームをスプレーのように吹きかけている映像がある。年齢制限があるのはホイップクリームではなく、付属されているスプレー缶のため。亜酸化窒素という成分が含まれており、「笑いガス」とも呼ばれていて高揚感を得られるそう。
以前だと子供でも簡単に買うことができた。それゆえ亜酸化窒素を吸引した事故が相次いだらしい。亜酸化窒素の吸引で、判断力が損なわれたり、心不全やけいれんを引き起こしたりする危険性があるほか、過剰摂取で幻覚を見る場合もあるそう。突然死の可能性もある。
それを受けて2021年11月、21歳未満にスプレー缶ホイップクリームを販売を禁止する法律が施行されたということ。効果が認められたら、他の州にも同様の法律が適用されるかもしれない。
でもこれで問題解決というわけにはいかない。根本的な問題が解決していないから。
それは「ハイになりたい」という心理。若者を中心としてこの心理が働く限り、代替品がすぐに見つかる。あるいは結果として違法ドラッグが取引される。ボクの中学校時代の悪ガキたちも、シンナーが手に入らないと接着剤のボンドを吸引していた。
そもそもなぜ人間はハイになりたいのだろう? 毎日お酒を飲まずにいられない人も、ある意味同じ状態だと思う。
ティーンの不良が薬物に手を出す動機は、禁止されているということに対する反発だと思う。思春期特有の鬱々とした気分によって、自分を抑圧するものに反抗したくなってしまう。その気持ちはよくわかる。あるいは不良仲間にしか仲良くしてもらえず、仲間意識を確実にするため禁止薬物に手を出す人もいるだろう。
成人になってからアルコールに依存する人は、お酒を飲むことでしかストレスに対処できないのだろう。法的には問題ないとしても、コントロールできないほど酒に溺れてしまうのは、違法薬物を摂取しているのと同じことになる。
人間がハイにならずにいられないのは、現実を忘れたくなるほど人生に困難があると感じているからだろう。これは少年でも中年でも同じ。自分では対処できないと感じることに圧倒されて、アルコールや薬物に逃避してしまうんだと思う。
これはどんな人も多少は感じていることだと思う。つまり誰だって依存症になってしまう可能性があるということ。政府や自治体としては、このホイップクリームのように規制をかけることしかできない。でもそれは対処療法に過ぎす、結果としてイタチごっこになってしまう。
ナチュラルハイという言葉がある。人間には本来、苦痛に対処できるシステムが存在している。苦痛に対して適切なホルモンや脳内物質を排出することで、副作用のないハイを現出することができる。だけどいつしか人間はその能力を忘れ、手軽な薬物に頼るようになってしまったのだろう。これもある意味人間の心の闇だと思う。
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