『はだしのゲン』を検証してみた
まったくの偶然なんだけれど、今日のブログで紹介する本がニュースになっていた。その作品とは『はだしのゲン』と言う漫画。
広島の原爆投下と戦争の実態を描いた作品として有名。今日のニュースは物語の舞台である広島の教育委員会が、『はだしのゲン』を小学校3年生向けの教材から削除したという内容。教材の改訂を検討する大学教授や学校長の会議で、「児童の生活実態に合わない」「誤解を与える恐れがある」との指摘が出たのが理由。
実はこの作品が問題視されたのは初めてじゃない。ちょうど10年ほど前の2013年にも、島根県の松江市教育委員会が小中学校の図書館においてこの作品の閲覧を制限したことが報道された。その賛否について激論が交わされていた。
ボクは子供の頃にこの作品を読んでいる。友人から借りたのか、図書館にあったものかは覚えていない。とにかく気持ち悪くて怖いという印象が強く残っていた。たまたま昨年、KADOKAWAが運営する電子書籍サイトのBookwalkerで『はだしのゲン』の4巻分が、期間限定で無料配信されていた。
10年前の島根県での出来事を思い出したので、機会があれば読もうと思ってダウンロードしていた。それでようやく第1巻を読了した日に、広島のことが報道されて驚いている。とにかく自分の目で確かめてみようと思い、その4巻を読破することにした。
2023年 読書#18
『はだしのゲン 第1巻 青麦ゲン登場の巻』中沢啓治 著という漫画。久しぶりに読んで、最初の印象は懐かしいという感覚だった。漫画の雰囲気は独特で、最近のコミックを見慣れていると、あまり上手い絵だとは感じられない。ただし内容はかなりシリアス。
この第1巻は終戦が近づいた広島が舞台。主人公の元には二人の兄がいるが、長男は予科練に志願し、次男は疎開している。一緒に暮らしているのは両親と姉の英子、そして弟の進次の4人。
元の父親の大吉は強烈な反戦主義者。それゆえ非国民として近所でも知られて、当然ながら子供たちもいじめに遭っていた。一時的に憲兵に連行されて留置されていたこともある。母親の君江は身重ながら、必死でそんな夫と子供を支えていた。
物語の前半から終盤にかけては、非国民としての差別や苦労が中心。露骨な嫌がらせは、学校の教師まで関わってくる。そして第1巻のラスト近くで広島に原爆が投下される。助かるのは元と母親だけで、残りの3人は家の下敷きになってしまうというラスト。
さて、子供の時以来に読んだ第1巻の感想を述べておこう。はっきり言えば、ボクはあまり好意的に読めなかった。悲惨な戦争の実態や、理不尽な軍部の政策を描こうとしているのはわかる。
ただ全体を通じて感じるのは、感情的な怒りのようなもの。そして全てが事実だとは思えないところが気になった。いわゆる自虐史観に基づいた作品という雰囲気が強く、戦争というものに対する客観的な視点が見えない。戦争に突き進んだ軍部や天皇制を批判したいがための物語のように思えてしまった。
原爆投下に関しても、現在に知られている事実とは違う。アメリカが原爆投下をした本当の理由は、戦争を止めるためじゃない。彼らは原爆の効果を実戦で試したかった。それで計画に沿って爆弾を使用している。日本がすぐに全面降伏をしたとしても、理由をつけて引き伸ばしただろうと考えられている。
原爆が日本軍部の暴走を止めるために投下されたと感じさせることで、アメリカ軍を使って日本軍を揶揄しているように見えた。全体を通じて作者の『怒り』が感じられて、どうにも落ちつかない漫画という印象だった。やはり子供の頃に感じた印象とは違う
まだ1冊目なので、最終的なボクの検証は4巻まで読んでからにしよう。とにかく久しぶりに読んだ印象としては、表現の自由は大切だけれど、小学生の教材として使用するのはどうかと思った。
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