観客を共犯者にする映画
推しのミュージシャンが新曲をリリースするとワクワクする。ジェイムス・アーサーが久しぶりに新曲を出した。イギリスびいきのボクだから、もちろん彼はイギリスのシンガーソングライター。
新曲は『A Year Ago』というタイトルで、元恋人への想いを綴ったラブソングとのこと。相変わらず渋い声は健在で、美声ではないけれど癒される。今はスタジオに入ってニューアルバムの制作に取り掛かっているらしい。楽しみで仕方ない。
同じくイギリスのミュージシャンでライブにも行ったことがあるエド・シーラン。彼が本人役で出演している映画がある。以前にもこのブログで紹介したことがある作品で、久しぶりに見直してみてやはり素敵な映画だと思った。特にビートルズのファンなら感動の涙なしで観られない作品。
2023年 映画#68
『イエスタデイ』(原題:Yesterday)という2019年のイギリス・アメリカ合作映画。主人公のジャックは、売れないながらもシンガーソングライターとして活動している。アルバイトをしながら歌い続けているけれど、彼を支えてくれているのはエリーという幼馴染の女性。学校の教師をしながら、マネージャーとして仕事を取ってくれている。
ある日、世界が12秒だけ停電する。ちょうどその時、ジャックは交通事故に遭う。意識が戻ると、その世界はビートルズが存在していない世界だった。ある日ジャックがビートルズの曲を演奏すると、周囲の人たちはその曲の素晴らしさに驚く。
やがてエド・シーランの目に留まり、彼の援助によって世界的なミュージシャンへとブレイクしていく。ショービジネスの世界に巻き込まれたジャックは、エリーという大切な存在を失ってしまう。エリーを取り戻したいジャックは、エド・シーランに頼んであることを決行するという内容。
この映画が面白いのは、ビートルズという存在を知っているのはジャックと映画を観ている観客だけだということ。(ラスト近くでパラレルワールドだと知っている人物が二人登場するけれど)
つまり主人公と観客は秘密を共有していることになる。だからジャックがビートルズの曲をオリジナルとして発表したとき、観客は自分が共犯者のような気分になる。そんなことをしていいのか、という不安を持ってしまう。
だからラストで全てを明かすジャックの姿を見たとき、観客も自分の罪を許されたような気持ちになる。そしてジャックとエリーの恋を心から応援できる。本当によくできた作品だと思う。ジャックの才能に嫉妬するエド・シーランの演技は最高だった。
そしてビートルズファンが滂沱するのはジョン・レノンの登場。ビートルズにならなかったジョンは、暗殺されることなく78歳になっていた。このシーンは何度見ても泣ける。ジャックが正直になろうと決めるのは、生きているジョンに会ったから。音楽好きの人には絶対に見てほしい作品。
ちなみにこの世界から消えているのはビートルズだけじゃない。ビートルズに触発されたオアシスというバンドも存在しない。そしてなぜかコカコーラも消えている。ダメ押しはハリーポッターも世に出ていない。そんな世界が元に戻らないまま終わることに好感を持っている。
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