SOLA TODAY Vol.836
トム・ハンクスが主演した『ターミナル』という映画がある。自国のパスポートが使用不能になり、JFK空港で暮らすことになった男性の物語。
フィクションにしか思えないだろうけれど、こういうことが実際にあるらしい。そして現実はもっと恐ろしい。
強い中国の“コワすぎる”側面――台湾の空港内で暮らす亡命中国人の「独占手記」
この記事の出来事は、おそらく日本人には理解できないだろう。だけど中国人にとって、決して人ごとじゃないと思う。
経済大国として名乗りをあげた中国だけれど、多くの矛盾と問題を抱えている。国家主席の習近平は、毛沢東をほうふつとさせるような権力を手にしつつある。チベットや新疆ウイグル自治区で行われている民族の弾圧は、現在の中国の恐怖政治を象徴している。
この記事で紹介されている中国人男性は、共産党員として活動していた。ところが汚職まみれの組織が嫌になり、大学の准教師としての道を選んだ。そして新公民運動という改革運動に加わった。
ところが習近平が成立すると、その運動が『反党活動』として指摘され、彼はお尋ね者になってしまう。なんとかタイに出国して逃亡生活をしていたけれど、すぐ身近に中国のスパイが姿を見せるようになった。
中国の体制に反発して他国へ亡命した人間が現地で生活に困窮すると、中国政府に助けを求めてスパイとして雇用されているらしい。そうした人間が、彼の周囲に集まってきた。それでタイでは危険だと思い、台湾に逃れることにしたらしい。
この中国人は記事の著者と知り合いで、現在の状況を手記にして送ってきた。この記事にその内容が紹介されているけれど、まさに『ターミナル』と同じ状況になっている。
台湾政府はとても人道的で、この中国人に対して適切な環境を提供してくれている。何度も相談に乗ってくれたし、食事も保証してくれている。だけど入国させると国際問題に発展するし、かといって中国に送り返せば収監されるのは明らか。それで空港内で2ヶ月以上も暮らしているそう。
現段階では、まだ台湾の空港にいる。台湾政府も対策を検討しているようだけれど、容易に答えを出せないらしい。21世紀の現代社会において、いまだにこんなことが起きているのに驚く。だけどそれは日本人の平和ボケゆえの感覚だろう。
少し前にサウジアラビアで国家を批判するジャーナリストが殺害された。同じサウジアラビアで結婚を強制された女性が拒否したことで、命の危険にさらされた。それで旅行中にカナダへ亡命するという出来事が起きている。
自由に発言したり、強制された結婚を断るだけで、命を奪われるかもしれない国がある。このような事実があることを、もっと拡散するべきだと思う。日本がある意味特殊な環境であることを、忘れてはいけないだろう。
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