SOLA TODAY Vol.334
表現者というものは、感想を聞けるのが何よりもうれしい。それは小説だけではなく、音楽や絵画等の世界でも同じだろう。できれば褒めて欲しいけれど、批判に対して耳を傾けないわけじゃない。むしろ批判こそが、次のステップへとつながることが多い。
もっとも残念なのが、感想が曖昧なこと。面白かった、面白くなかった、というだけの感想はエネルギーに変換できない。『何』が面白いのか、面白くないのかわからなければ、次の作品にフィードバックできないし、モチベーションを高めることにならない。だから率直な批評は、とてもありがたいもの。
それは映画の世界でも同じらしく、ディズニーが面白いことを始めた。
Disney Researchら、映画に対する観客の反応を顔の表情で評価するDeep-learningを用いたシステムを発表
アメリカの大学とDisney Researchの研究者は、AIのDeep-learningを使って映画の評価を観客から引き出す実験をしている。顔の動きで感情を読み取り、その映画の感想をデータ化しようとするもの。
記事によると以下のような実験が行われている。
『研究チームは、9箇所の映画館の150の上映にFVAEを適用し、暗闇の中で聴衆の顔を監視するために4つの赤外線カメラを装備した400席の劇場を使用しました。その結果、合計で3,179人の視聴者から1秒間に2フレームの割合でキャプチャし、1600万の個別画像データセットが得られました』
これをAIに学ばせることで、その映画の評価を明確にできるようになるらしい。これを世界中の映画館で設置してビックデータとして利用すれば、AIはかなり正確に観客の反応を分析できるはず。それもシーンごとの微妙な評価も知ることができるだろう。
コメディ映画ならどれだけ笑うかだし、ホラーならどれだけ恐怖を感じるかが評価される。感動した観客が流す涙などもデータ化できるのだろう。これはとても興味深い研究だし、応用範囲を広げることができるはず。
将来的にアカデミー賞はAIが決めることになるかもね。黒人がどうの、マイノリティーがどうのという批判が出ることはないだろう。だって純粋に観客の反応を評価するんだからね。
そして映画の製作者としても、どういう映画を作ればいいのかという指針を得ることができる。いや、AIがビックデータを利用して、最高にウケる脚本を書いてしまう可能性もある。映画業界に波乱が巻き起こるだろうなぁ。
最近はネットに接続されているテレビが増えてきた。そのテレビにパソコンと同じようにカメラを設置して、自宅でテレビを見ている人の感想を集めることも将来的にはできるかもしれない。そうなれば視聴率なんて問題じゃなくなる。
スポンサーもどんなCMが高評価を得ているか、直接把握できるようになるだろうね。そうなると広告のビジネスモデルも根底からひっくり返るかもしれない。
AIの進化が、大勢の人間の仕事を奪うのはまちがいない。でもそれは悲観的にとらえる必要はなく、さらに便利な社会になるための通過点だろう。エンタメの世界からこのような改革が起きることで、世の中全体が変わっていくような気がする。
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