フリーメイソンの謎
7月に入ると、一気に雰囲気が夏になった。晴れているけれども、なんとなく蒸し暑い。これで蝉の声がしたら、すっかり夏本番のように感じるだろう。
夏になるとよく見かけるこの花も、昨日の散歩中に満開だった。きっと本格的な夏が来たことを感じているだろうね。
7月に入ったと同時に、新しい小説を書いている。ボクはこうして新しい作品を書くことが大好きだし、それに負けないくらい推敲するのが好き。さらに完成した物語を大幅に書き直すのも大好きときている。完成品にこだわって書き直すのを嫌がっていたら、何も進歩しないと思っている。むしろボクのように訂正を好きになるほうが楽しめる。
だけどやっぱりもっともワクワクするのは、新作を書き進めて行くとき。なぜなら答えが見えないから。ある程度の構想を考えてから書き始めているけれど、直感を受け取ったらどんどん進路を変更する。そうすると、完成したものが予想もしなかったストーリーに化ける。その感覚が楽しくてやめられない。
答えを決めてしまって道を制限してしまうと、自分の常識の範囲でしか物語が展開しない。人間の意識というのは、表面に出ている顕在意識は氷山の一角でしかない。隠されている潜在意識に、自分でも気がつかないものが隠されているはず。
新しい小説を書くという行為は、そうした潜在意識に働きかけることだと思っている。自分でも驚くような展開にならなければ、読んでいても面白くない。どんな人間でも、そうした想像を超えたパワーを持っているはず。
そのことをテーマにした小説を読んだ。
『ロスト・シンボル』ダン・ブラウン著という本。
ボクが読破を目指している、ロバート・ラングドンシリーズの3作目。唯一この作品だけが映画化されていない。この次の作品である『インフェルノ』は、昨年に、やはりトム・ハンクスの主演で映画化されている。
なぜこの作品だけ映画化が飛ばされたのか? 昨日最後まで読んで、その理由がわかったような気がする。
今回の舞台は前作と前々作のようにヨーロッパではない。ロバートの自国であるアメリカ合衆国のワシントンD.C.が舞台。そしてイルミナティ、シオン修道会について過去の作品で取り上げられてきたが、この作品でロバートが果敢に謎解きをするのがフリーメイソンの謎。
今回のマドンナとなってロバートとともに行動するのは、キャサリン・ソロモンという女性科学者。純粋知性科学という分野の研究者であり、人間の意識が物質に与える影響を研究している。一歩まちがえればオカルトのような研究だけれど、キャサリンは死後世界の証明となるような結果まで引き出している。
そのキャサリンの兄はピーター・ソロモンといい、歴史学者でフリーメイソンの幹部。ロバートとは親友で、彼に秘密を封じたある『物』を託したことがきっかけで、ロバートは事件に巻き込まれる。
この小説が映画化されなかった理由は、面白くないからじゃない。扱っているのが精神世界だから。特にフリーメイソンの謎が解かれてその事実が明らかにされる下巻の後半は、哲学的で形而上学的な要素があまりに強く、これを映画で語るのは難しいと思う。
おそらく小説としてしか表現できない内容だろう。それほど概念的要素に満ちた作品になっている。だけどボクはむさぼり読んでしまった。アメリカ合衆国の首都の有名な建物を思い浮かべながら、そこに隠されているかもしれない謎に心を馳せた。とてつもなくスケールのでかい小説になっている。
ダン・ブラウンという作家が、どれほど大量の資料を読み込んで、普段から時間をかけて勉強しているのかを想像できる。そうでなければこんな作品は書けないだろう。
人間の意識世界に興味がある人、そしてフリーメイソンの謎が気になる人は、ぜひ読むべき作品だと思う。ハラハラドキドキしながらも、何か感じることがあるはず。
さて、次はこのシリーズの最後になった『インフェルノ』を読むぞ。そして昨年に公開された映画を観ようと思う。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。