毒気に当てられた
天気は下り坂だけれども、予定どおりバルコニーの大掃除を決行。これで今年の大掃除に関して、外に出てやるような大物はすべて終了。残すところは部屋のなかばかりなので、寒くなっても大丈夫。時間のあるときにボチボチやろう。
さて、昨日の入浴中のこと。最後に入浴した人が、お風呂掃除をして出てくるのが我が家の決まりごと。ボクは風呂掃除をしながら、小説のストーリーを考えることが多い。ところが昨日、今書いている小説の登場人物が突然に話しかけてきた。
ほぼ終盤になっているのに、悪役で登場している初老の男性が話しかけてくる。変に思うかもしれないけれど、これってよくあることなんだよね。なんとその人物が言うには、後半部分における自分の登場シーンについて、大幅な書き直しを要求してきた。
まったく想定外のことだったので、かなり抵抗した。だって他の部分にも影響するところなので、かなりの書き直しになってしまう。でも登場人物の立場にすると、著者というのは召使いのようなものらしい。有無を言わせないほど強い口調だった。
仕方ないので、今日の午後からそのオッサンが言ったように、設定を大幅に変更した。関連するシーンが多いので、最終章まで行くのに2時間近くかかった。まだ明日も直す部分があるけれど、ざっと修正部分を読み返して驚いてしまった。
たしかに変更後のほうが絶対にいい。読者は事情がわかっているけれど、登場人物はわからないという設定になる。だから読み手としては、かなりのめり込んでしまう。ボクが子供のころに、『8時だよ全員集合!」というドリフターズがやっている生放送の番組があった。
その番組で定番のコントは、悪者が近くに迫っているのに、舞台の出演者は気がついていないというシチュエーション。だから観客の子供たちが「危ない〜!」と必死になって叫ぶ。まさにそんな状況になった。いやいや、登場人物のいうことは、素直に聞くもんだね。
おそらく他の作家たちも、同じような経験をしているはず。そんな作家たちのインタビューを集めた本を読んだ。
『パリ・レヴュー・インタヴューII 作家はどうやって小説を書くのか、たっぷり聞いてみよう!』という本。
この本は先日紹介したインタヴュー集の続編。この本の成り立ちについては、最近書いたこちらの記事を参照してほしい。
前回の本では、作品を読んだことがある作家は一人だけだった。でもこの続編は二人もいた。
そのうちひとりは、アーネスト・ヘミングウェイ。とても興味深いインタビューだった。そしてもうひとりは、カート・ヴォネガットという作家。『スローターハウス5』という映画を観て感動したので、原作を読んでいた。
このインタビュー集が普通とちがうところは、単なるインタビューではないから。通常のインタビューなら、記者が書いた記事がそのまま掲載される。せいぜい、作家には内容にまちがいがないか確認してもらうくらいだろう。
だけどこのインタビューは、作家が最終的に内容を推敲している。場合によっては大きく訂正したり、加筆している場合もある。記者と協力して、当初とはちがう内容に書き換えられたものもある。だから作家の作品の一部としても楽しむことができる。
それだけに強烈な個性が飛び交っている。作家という人間は、本当にアクが強い。いいように言えば、個性的だということ。だから続けて読んでいると、作家の強い毒気に当てられてしまう本になっている。
ひとりの作家のインタビューを読んだら、少し休憩しないと次に進めないほど疲れる。そのうえ小さい字で400ページほどあるから、読了するのにかなり時間がかかってしまった。
1950年代から1990年代の後半にかけて行われたインタビューだったから、少し古い時代のものが多い。だけど今読んでも、勉強になることがたっぷりと書き残されている。作家の精神を支えているものは、時代を超越しているんだと思った。かなり刺激的な本だったなぁ。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。