SOLA TODAY Vol.509
人工知能が人間の仕事を奪うということが常識になりつつある。これはすでに始まっていることで、未来の話ではない。職種や企業の規模によって、導入に時間差が生じているだけ。そんな時間差のあいだにもAIは学習を深めているので、目の当たりにしたときには、さらに進化した姿を見ることになる。
だけど悪いことだけじゃない。むしろ人間にとっては、歓迎すべきことじゃないだろうか。ある漫画家さんがインタビュー記事で、そのことについて語っておられら。
人工知能の発展は「人間は素晴らしい」幻想を崩し、それでも「人のいいところ」を浮き彫りにする──『AIの遺電子』山田胡瓜
その漫画家さんは、山田胡瓜さんという方。ボクは読んだことがないけれど、週刊少年チャンピオンに『AIの遺電子』という漫画を連載されているらしい。
この記事のインタビューで、AIに仕事を奪われるであろうことを、山田さんは肯定されている。だけどボクと同じように、それが決して悪いことではないという見解を持たれている。
その大きな理由として、人工知能の発達によって、今まで気づかなかった人間のいいところが見えてくる、ということ。
そうそう、そうだよね! ボクも激しく同意する。
機械に仕事を奪われることによって、人間はどうにかしようとするだろう。転職する人があれば、新しい何かを考える人も出てくるだろう。そこに共通しているのは、「人間にしかできないことは何?」ということだと思う。
それは必然的に、人間のいいところを見つけることになる。そう思うと、ますますAIの進化に期待したいところ。
人間のいいところとして、山田さんが言われたことに衝撃を受けた。たしかに人間にしかできないことだと思う。
その人間にしかできないこととは、『忘れる』こと。
『忘れる』という機能は、ネガティブに取られがち。だけどこの機能によって、人間は随分と救われている。抱えきれない情報をすべて記憶していたら、脳がパンクしてしまう。必要なときに、何かをきっかけにして思い出せればいい。
あるいは辛いことや悲しいことも、『忘れる』ことによって前に進むことができる。記憶から消えてしまったわけじゃないけれど、時間をかければとりあえず顕在意識から消すことはできる。辛いことを四六時中考えていたら、精神が持たないものね。
だけどAIにとって『忘れる』ことなんてできない。一度でもデータとして記録されたものは、消去しない限り存在する。もしAIに感情移入したら、それは死ぬほど辛いことかもしれない。
この記事を読んで思ったのは、人間にとってマイナスだと思っているのものが、実は武器になるということ。これは象徴的な意味においても気づきをもたらしてくれる。人間ゆえの欠点、つまり自分ゆえの欠点だって、生かしようによっては長所になるということ。他人と戦う武器にできる。
AIに仕事を奪われるという危機感を抱くことで、自分の新しい可能性が見えてくるかもしれない。やっぱり、AIの導入をどんどん進めるべきだよね。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。