SOLA TODAY Vol.586
『食』は健康に直結するから、ネットの記事で話題になることが多い。それだけに発信する人の立場や信条によって、まったく正反対の内容がまことしやかに流布される。何を信じていいのかわからなくなる。
例えば炭水化物に関してだけでも、議論が錯綜している。炭水化物はダイエットの敵だ、と糖質制限が高らかに宣言される。それに対抗するように、炭水化物の摂取が少ないと、早死にするという記事が出る。それも医師がその記事を書いていたりする。
いやいや、そんなことはない、と言いたげにこんな記事も発信される。
これはイギリスの医師が発表した論文で、炭水化物の摂取量の多さは、全死亡リスクの上昇と関連しているというもの。炭水化物を摂取すると、早死にするということになる。先ほどの意見とはまったく正反対になる。
この記事によると、むしろ脂質を取るほうがいいとのこと。お米やパンよりも、お肉を食べるほうが健康でいられると述べている。
そうなるとヴィーガンたちは黙っていない。まったく肉を食べてなくても、こんなに筋肉モリモリだとFacebookに自分の肉体をさらしている人がいる。肉食する人を、さも野蛮人かのように罵り、ヴィーガンにとっての正義を貫こうとする。
いやいや、そんなことはない、とまた反論が出る。
これは日本の医学博士が最近になって公表している。50歳を過ぎると、性ホルモンが減少してくる。それが高齢者の体調不良の要因となっているから、性ホルモンの材料を意図的に補給しなければいけない。それに適しているのがステーキとのこと。
ただし脂質を取りすぎると問題で、週に2回くらいのペースがちょうどいいらしい。さらにステーキは肉にかぶりつくというイメージを人間に与えるので、狩猟時代の本能が呼び覚まされて、さらに元気になるのだそう。なかなか面白い記事だった。
こうして並べてみると、カオス状態であることがわかるよね。うっかりすれば、ボクたちは好き勝手なベクトルを有する情報に翻弄されてしまう。
なぜこんなことになるのか?
ボクが思うに、人間の『不安』を刺激しているからだと感じる。だから過激に反応してしまう。
人間は『過剰』であることと、『不足』であることに『不安』を覚えやすい。特に『食』に関しては健康に直結するだけに、その不安が顕著になる。
何かを食べ過ぎているのではないか? 何かが足らないのではないか? そんな『不安』がいつも心を占めている。だからこうした記事を目にすると、すぐに飛びついてしまう。結局はそうした記事を読んで、自分が抱えている『過剰』や『不足』の概念を、さらに強化しているだけのことになる。
大切なのは、バランス感覚だと思う。どんなものであれ、食べ過ぎでも足らなくても、それなりに影響は出るだろう。そして個人差もある。だから自分に適したバランス感覚で食べればいいだけ。
要するにあまり周囲の声を気にしないことだよね。自分の身体に訊くのが一番ベストだということ。ベジタリアンであることで好調をキープできる人がいれば、肉を食べることで快適に過ごせる人もある。もっと自分を信じたほうがいいよ。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。