『私』が消えていく恐怖
いい秋分の日だなぁ。秋晴れで空気は乾燥しているので、思い切り布団を干すことができた。朝からの掃除も、いつもに増して気合が入った。
節目なので秋分の日は大切にしている。いつもは冬至に掲げたテーマを意識して、その進捗状況をチェックしている。だけど今年の秋分の日は、3連休なのも忘れて仕事に没頭していた。
そもそもボクのテーマが1日も休まずに小説を書くこと。だからそういう意味では、節目の日であることさえ意識せずに仕事をしているのはいいこと。自画自賛だけれど、いちいち進捗状況をチェックするまでもないなwww
そしてそんな有意義な1日を象徴するような、素晴らしい映画を観た。
『アリスのままで』(原題: Still Alice)という2014年のアメリカ映画。
主人公のアリスは言語学者で夫は医師。3人の子供はそれぞの道を見つけて、自らの人生を歩んでいる。公私ともに充実したアリスに、恐ろしいことが起きる。それは若年性アルツハイマー症だった。
そのアリスをジュリアン・ムーア、夫のジョンをアレック・ボールドウィン、そして次女のリディアをクリステン・スチュワートが演じている。この3人の演技だけでなく、長女役と長男役の俳優さんも最高だった。この映画で、ジュリアン・ムーアはアカデミー賞主演女優賞を受賞している。
とてもシンプルなストーリーなので、驚くようなどんでん返しがあるわけでもない。ただひたすら、アリスの記憶が消えていく恐怖を観客は実感させられる。
人間の記憶=自我だろう。つまり記憶を失うということは、『自分』を失っていくことになる。時間の経過に従って変化していく様子を、ジュリアン・ムーアが鬼気迫る演技で表現している。もう涙しか出てこない。
アリスの病気は遺伝性のもので、長女にもこの病気が遺伝しているという事実を突きつけられる。自分のことでさえ堪え難いのに、アリスは子供に対する罪悪感で打ちのめされてしまう。
自分が正常な判断ができなくなったときにそなえて、アリスは自分にあてたビデオメッセージを残していた。家族に気づかれることなく自殺する方法だった。だけどアルツハイマーが進行した彼女には、悲しいかな自殺することさえできない。呆然とするその姿に、見ているこちらが泣き出しそうな気分になった。
そんな彼女を支える家族の姿に救われる。こんないい夫を演じるアレック・ボールドウィンを見たのは初めてかもw
悲しいはずの映画なんだけれど、ただ悲しいだけじゃない。それはアリスの周囲に愛が満ちているから。そしてその愛を引き寄せたのは、それまでの彼女が夫や家族に無償の愛を注いできたからだろう。だからとても心温まる作品になっている。いい映画だったなぁ。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
コメント (0件)
現在、この記事へのトラックバックは受け付けていません。
コメントする