取引先が誠実とは限らない
アメリカほどではないけれど、日本でも『アイデア』が売れる時代になってきた。
ただ新しい商品を思いついても、制作する設備やノウハウがないと製品化できない。その一方で設備を持つ日本の工場は苦労している。海外に製造拠点を置く大企業が増えているから仕事がない。
そんなときにマッチングが成立する。アイデアを持っている会社が、仕事のない工場に制作を依頼することができる。いままでにない商品だから、ヒットすればどちらも儲かる。
実際にそうした例が増えているらしいけれど、同時にややこしい問題が発生している。
製造委託先から訴えられた「空調服」はいかにして自社商品を守ったか
空調服というのは見たことがある人は多いだろう。夏の工事現場で熱中症を防ぐため、ファンのついた作業着のこと。この空調服を開発したのは東京の会社。
ただ自社に製造施設を持たないので、広島の作業服メーカーに製造を委託した。そしてその空調服は大ヒットする。
ところがとんでもないことが起きた。その広島のメーカーが、空調服を開発したのは当社だと言い張って東京の会社を訴えた。思った以上に儲かることがわかり、製造ノウハウもあるので儲けを独占したかったのだろう。
さらに東京の会社が小さなところなので、裁判になれば多額の訴訟費用が必要になる。だから泣き寝入りをすると思ったのかもしれない。ひどい話だよね。
だけど東京の会社を経営している人は、ただ者ではなかった。なんとソニーで開発者を経験していた人だった。ゆえに当然ながら特許は申請しているし、製造を委託する際の双方のやり取りをすべて記録にして残していた。
広島メーカーの主張は、ネットで空調服を検索すれば当社の名前がトップでヒットする。だから元祖なんだと言い張るレベル。結局は広島のメーカーの訴えが退けられ、東京の会社が勝訴した。当然の結果だろう。
この事例から学べることは多い。これからはこうしたケースが増えてくるはず。アイデアがあっても製造できない場合、製造を他社に委託するしかない。そんなときアイデアを持っている会社が弱小だと、ヒットした場合に裏切られる可能性がある。
特許の取得だけでなく、会社間のやり取りを残しておくことは大事なんだろうね。民法上は口約束でも契約は成立する。だけど実際の裁判において、言った言わないというレベルのことは証拠にならない。だからメールや契約書等で、証拠を残しておくのが基本なんだと思う。
これは個人の取引でも同じ。世知辛い話だけれど、他人が誠実とは限らない。いつ牙を剥かれてもいいように、それなりの準備をしておくことが大切だよね。
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