アメリカ警察組織の深い闇
黒人のジョージ・フロイド氏が白人警察官による暴行で命を落としたことで、世界中の抗議行動は勢いを増すばかり。特にお膝元のアメリカでは、暴動の鎮圧に軍隊を動かすという話も出てきている。
普通に行う抗議行動は問題ないし、むしろ有色人種に対する不当な差別を見直す機会だと思う。ただ一部の人が暴徒化することで、正当な抗議に支障をきたしているような気がする。
そのうえフェイクニュースかもしれないけれど、ジョージ・フロイド氏がかなり悪質な犯罪者だったという記事まで出てきた。真相はわからないけれど、どちらにしても彼を窒息死させた警官の罪が許されるわけじゃない。
その想いは地元の議員たちにもあるようで、ミネアポリスの市会議員たちが、ミネアポリス市警の完全な解体を公約とした。そして一から警察組織を作り直そうとしている。賛成派が多数となっているらしく、本当にそうなりそうな空気とのこと。
もしかしたら、アメリカ警察組織の解体と再生は必要なのかもしれない。今日たまたま観た映画が、まさに警察の腐敗を扱った作品だった。フィクションだとはいえ、そこにはアメリカの深い闇を伴った事実が散りばめられているように感じた。
『フェイク シティ ある男のルール』(原題:Street Kings)という2008年のアメリカ映画。写真のキアヌ・リーブスが主演している。
主人公はロス市警の刑事であるトム。優秀な刑事だけれど、無鉄砲で違法スレスレの捜査をしている。映画の冒頭でも、無抵抗な誘拐犯を皆殺しにしている。そして彼らが先に発砲してきたように証拠を偽装していた。
それでも人質事件や難解な事件をいくつも解決してきたので、チームの刑事たちもトムのボスも、彼に対して一目置いていた。いや、むしろそのチームが一丸となって悪を掃討するために、証拠の隠滅や捏造を続けていた。
でもある事件がきっかけで、トムは内務調査部に目をつけられる。そうなったのは、不正を指摘したことでチームから追い出されたトムの元相棒が密告したから。その相棒に真意を正そうとしたトムは、突発的な強盗事件に巻き込まれてしまう。そしてその相棒は強盗に殺されてしまった。
だがこれはトムが所属するチームの陰謀だった。元相棒の口を封じるため、強盗に見せかけて殺そうとした。だけどたまたまトムがそこに居合わせたことで、彼も命を狙われることになってしまう。なぜなら元相棒を殺した真犯人を見つけようとしたから。
というような展開で、最終的にはトムが自分のボスの陰謀を暴く。ただトムにそうさせた黒幕がいて、ラストではそのことも明らかにされる。ありがちなストーリーだけれど、キアヌ・リーブスがカッコいいのでとても楽しめる作品だった。
ただこの映画を見ていて、最初に書いた警察組織の腐敗について考えざるを得なかった。元相棒が殺された場所にいたことを隠すため、トムは一時的に制服を着せられて、警察の苦情係に格下げされる。警察への苦情を受け付ける窓口。
何気ないシーンなんだけれど、その苦情内容がかなりひどい。警察が市民の財産を掠め取ったり、不当な暴力で権力を振りかざしている。そしてその相談にきている人たちは、全員が有色人種だった。勝手な想像だけれど、この映画の監督はあえてそのシーンを挿入したように感じた。
最初の事件のとき、トムが元相棒にボロクソ言われるシーンがある。そのときのトムのセリフにも監督の意図が隠されているような気がした。トムは「黒いやつや、黄色いやつは捕まえるけれど、白い奴は車に載せて家まで送ってやるよ」とジョークのように言い返す。元相棒は黒人だった。
このセリフにも、アメリカ警察の闇が見えている。今回のデモによる抗議は、そんなアメリカ国民の不満が引火点に達してしまったんだろう。この映画を観てそう感じた。
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