「映像記憶能力』は習得可能
トム・クルーズが主演した『アウトロー』という作品で、主人公のジャック・リーチャーが特殊な能力を披露するシーンがある。警察の証拠保管庫に入って、ちらっと証拠品の銃を見ただけ。なのにかなり時間が経過してから、刑事に質問されてその銃の登録番号をスラスラと答えている。
これは「映像記憶能力」というもので、見ただけで写真を撮影するかのように、対象物の記憶が完璧に保存できる能力。小説や映画で登場するのは、発達障害のひとつであるサヴァン症候群というもの。驚異的な記憶力や数学の能力が取り上げられることが多い。
サヴァン症候群の人に限らず映像記憶能力を持つ人はいるそう。その能力について書かれた記事が興味深かった。
見たもの全てを映像の状態で記憶できる「映像記憶能力」訓練すれば習得可能なのか?
リンク先の記事によると、三島由紀夫、山下清、谷崎潤一郎等には映像記憶能力があったと言われている。10人に1人くらいの割合でこの能力が認められるそうだけれど、最近の研究によれば大人になると消えてしまうというのが定説らしい。
だからジャック・リーチャーのように、成人男性が完璧な映像記憶能力を発揮することはないということかな? ただこの映像記憶能力は誇張されている傾向があって、カメラやビデオで撮影したような記憶と同じだと誤解されているとのこと。実際はそこまで完璧なものじゃないらしい。
それでも映像記憶能力を有する人は、特定の体験について時間をかけたら明確に思い出すことができる。もちろん主観的体験の記憶なので、その人のフィルターを通した記憶だろう。映像だけでなく匂いや音まで、その当時の状況を追体験できるらしい。
大人になって映像記憶能力が消えてしまうのは、自我の芽生えと同時に抽象的思考を発現するからだと考えられている。子供のときはありのままを記憶しようとするけれど、大人になれば抽象化した概念として記憶するようになる。その影響で能力が失われるのだろうということ。
さらに大人になれば覚えることが多いので、単純に脳が対応できないという説もある。映像記憶能力は、もしかしたら子供時代だけの魔法のようなものかもしれないね。
でもボクは成人してもその能力をある程度は残せるし、新たに習得していくことは可能だと思っている。例えば小説を書くとき、想像の世界なのにボクには登場人物たちや周囲の風景が映画のように見えている。その映像を文章に書き起こしているという雰囲気。
実際に見たものではないのに、想像力によって本当に起きた出来事のように知覚することができる。これはある程度の慣れによって可能となるはず。絵を描く人も同じだろうと思う。さらに夢というものもある。夢は記憶の再構成のようなものだけれど、リアルに五感を刺激してくる。
あれだってある種の映像記憶能力だと思う。だから夢を記録して追体験する習慣をつければ、その世界が脳内でいつでも再生できるようになる。これはボクの実感としてわかる。将棋や囲碁の名人は驚異的な記憶力を見せる。もちろん才能もあるだろうけれど、積み重ねた訓練による映像記憶能力を発揮しているんだと思う。
つまり映像記憶能力の消失原因は成人することではなく、大人になって想像するという遊び心を失くしてしまうせいだと思う。だからこそ小説や映画が大切だということ。想像力を大切にしていけば、映像記憶能力はその人なりに役立てることができると思うなぁ。
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