トラブル必至のインボイス制度
来年の10月から実施されるインボイス制度。賛否を含めてさまざまな意見が飛び交っている。税理士事務所で働いていて、その後も経理や財務の仕事をしていたボクにすれば、やっかいな制度だなぁというのが正直な印象。おそらく日本中の税理士や企業の経理担当がうんざりしているだろうと思う。
そもそも消費税という税金が面倒な性質を持っている。初めて消費税が導入されたとき、ボクは税理士事務所に勤めていた。毎週土曜日になると勉強会を開いて、職員全員で対応策を検討した記憶がある。もっとも厄介なのが免税制度。
企業の規模によって免税業者となったり、簡易課税という方法が選択できた。税理士事務所の顧問先は中小企業や個人商店が中心なので、個別に対応策を検討する必要があった。今回のインボイス制度はそうした免税業者に関する不公平感を払拭する意味もあるだろう。だけどかえってトラブルが多発しそうな予感しかない。
免税のままの「個人タクシー」は行灯の形を変更 「インボイス対応」を組合に聞く
リンク先の記事は、インボイス制度に関して東京の個人タクシー組合にインタビューしたもの。一般的なサラリーマン家庭にとって、インボイス制度はあまり影響ないように思える。だけどサラリーマンであっても、営業等で出張が多い人はインボイス制度を無視できない。
大手のタクシー会社なら課税業者なので問題ない。インボイス制度に対応した領収書を発行してくれる。それを会社の経理に回せば、必要経費として精算してもらえる。だけどもし利用したタクシーが免税業者なら?
インボイスに対応していない領収書だと経費で落とせない。消費税というのは企業が顧客から預かった消費税を、仕入れや経費等で支払った消費税を差し引いて納税する。だから来年の10月以降になると、インボイスに対応していない領収書は差し引く消費税の対象にならない。経理担当にすれば、営業マンに利用するタクシーに注意するよう徹底するしかない。
こうした事態を受けて、個人タクシー業界も対応を考えているそう。リンク先の記事によると、これまで99%が免税事業者だった個人タクシーの組合員を、課税事業者へと移行する作業を進めているとのこと。10月上旬現在で、9割超の組合員が課税事業者となった。
仕方ないとはいえ、個人タクシーの運転手さんにすれば負担が増える。これまで消費税の申告納税義務がなかったのに、課税事業者となることで平均して30万円くらいの消費税を納税する必要が出てくるそう。事務手続きも考えたら、かなりの負担増となる。
一方免税事業者にとどまることを選択した個人タクシーの場合、タクシーの行灯を変えることを組合で決めているらしい。顧客が免税業者かどうかを判断できるようにするため。だから免税を選択した個人タクシーは、インボイス対応の領収書が必要な顧客から敬遠されてしまう。
これはタクシー業界だけのことじゃない。フリーランスで仕事をしている人のほとんどは同じ立場になる。元請業者にすれば、インボイス対応の領収書を発行できないフリーランスに仕事を頼むことが難しくなる。最悪の場合、大勢の個人事業者が廃業に追い込まれることになるかもしれない。
ただ課税関係の明確化という意味では、これまで曖昧だった消費税制度を修正したとも言える。それだけになんともいえない微妙な感覚を覚えてしまう。来年の10月にはどうなっているんだろう? やっぱりトラブルが起きそうだなぁ。
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