悪いのはオシッコ男なんだけれど
企業や自治体の基本は事なかれ主義だと思う。トラブルが起きても、できる限り大ごとにしたくない。数日前、堺市の区役所内で昨年に起きた暴行事件を、堺市が公にしていなかったことが報道された。
暴力を受けた男性は、11月に自宅で遺体となって発見されている。隣人等から暴力を受けていたらしく、生前に区役所で暴行されているところを職員に目撃されている。だけど加害者が「じゃれているだけ」と弁明したことを受け入れ、その場でおさめてしまった。堺市がもう少し早く公表していたら、何らかの対応が取れたかもしれないのに。
命に関わる事件ではないけれど、同じく企業の隠蔽体質を露呈することになった出来事がある。ボクは記事を読んで失笑しつつも、企業の対応に憤ってしまった。
昨年の11月26日のこと。ニューヨーク発ニューデリー行きのエア・インディア機内のビジネスクラス席で、とんでもないことが起きた。前後不覚になるほど泥酔した男が、後の席に座っていた72歳の女性に向けて放尿した。これはひどい。
女性の服も靴もバッグも、男の尿でびしょ濡れ。バッグにはパスポート、渡航書類、紙幣等が入っていた。酔っていたとしても言語道断の行動で、その男の行為は犯罪として逮捕してもらうレベル。悪いのは当然ながらこのオシッコ男。
だけどその女性が怒ったのは乗務員の対応。座席に消毒スプレーをかけただけで、満席なので席の移動はできないと答えた。他の客が「ファーストクラスなら空いている」とアドバイスしたのに、機長の判断で却下されたそう。
オシッコで濡れたままの席に座るなんて無理。その女性が立ち尽くしていたところ、仕方ないという様子で乗務員用の席に案内されたそう。そして乗務員は加害者に対してどう対応して欲しいか訊いてきた。当然ながらその女性は、到着先の警察に告発して逮捕してもらうと答えた。
ここからの乗務員の対応がさらにひどい。なんとその男を連れてきて、狭い乗務員席に向かい合わせ状態で二人きりにさせたらしい。告発されたら妻や子供に迷惑をかける。だから何とか許してほしいと男は謝りまくった。
ショックで気が動転している72歳の女性の前に加害者を座らせるなんて、乗務員の対応は心がなさすぎる。結局、土下座までされて告発しないように言われたことで、その女性は押し切ることができなかった。それで女性は航空会社に服と靴の弁償を要求した。ところが航空会社は一切関係なく、加害者の負担だと突っぱねたそう。
やがて女性の口座にオシッコ男から振り込みがあった。だけど彼女はそれを突き返し、告発文を書いた。そして航空会社を所有する会長に送り、インドの現地紙が報道した。その記事が世界中に拡散されたことで、今回の事実が明らかになったそう。
オシッコ男は姿をくらましたけれど、やがて発見されて警察に逮捕された。もちろん勤めていた銀行もクビになった。こうした結果を受けてインド航空は航空局に事態を報告したけれど、それは事件から1ヶ月も経ってからだったとのこと。ひどい話だよね。
加害者は文句なく悪い。ここまで泥酔するのは、社会人として言い訳できる状況ではない。誤って済まそうと思ったのは甘すぎる。でもそれ以上に被害者の女性を怒らせたのは、航空会社の対応だろう。企業の事なかれ主義もここまでくると、抜本的に経営体質を変革しないと淘汰されてしまうと思う。ネット社会における世論は怖いからね。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
コメント (0件)
現在、この記事へのトラックバックは受け付けていません。
コメントする