SOLA TODAY Vol.249
犯罪とネットが切り離せない現代において、コンピュータの扱いは重要になってくる。
ハードそのものは常に進化しているから、問題になるのは人間の能力だと思う。ミスをするのは機械ではなく、たいてい人間だから。
事実こんなことが起きている。
2011年のこと。イギリスのハートフォードシャー州警察で働く警察官が、児童ポルノに関わった容疑者のIPアドレスを特定した。それをサウスヨークシャー週の同僚に連絡することで、犯人が逮捕される。
逮捕されたのはナイジェル・ラングさんという黒人で、薬物中毒の若者を救うリカバリーワーカーとして働いている。でも彼のコンピュータからは何も出てこない。完全な誤認逮捕だった。
3週間後にラングさんのパソコンは返却されて無実が証明されたが、彼はリカバリーワーカーの仕事を失う。児童ポルノを扱ったとされるIPアドレスは、ラングさんが一緒に暮らす白人のパートーナーのものだったらしい。
だからラングさんは、自分が黒人だから疑われたのだろう、と思って提訴した。その訴え自体は棄却されたけれど、この出来事の最初にハートフォードシャー州警察が関わっていたことを知る。もしかすると、その情報が間違っていたのではないか?
弁護士を立てて情報開示を求めたけれど、警察は拒否するばかり。ようやく2014年になって警察はミスを認め、正式に謝罪した。原因はIPアドレスを伝えるときのタイプミスとのこと。
ネット犯罪において、IPアドレスは犯人検挙の証拠となる。ネット上で脅迫的な文章を書いたりすれば、発信者のIPアドレスによって容疑者を特定できる。警察の正式な依頼があれば、通信業者は個人情報を開示する。
でもこんな単純ミスで犯人扱いされたら、たまったものじゃない。冗談みたいだけれど、こんな映画のようなことが現実に起きている。このラングさんの立場を想像すると、やりきれない気持ちになる。
誤認逮捕というものは、たとえ痴漢のような犯罪であっても人生を狂わせてしまう。ましてや冤罪で死刑にでもなったら、人生そのものを失うことになる。
科学の進歩で犯罪捜査はより精密に、正確になっていると思う。だけど最終的な判断を下すのは人間。「タイプミスでした、ごめんなさい」で片付けていい問題じゃないと思う。
この出来事は、決して人ごとじゃない。現代は誰もがネットを使用している時代だから、いつどんなことに巻き込まれるかわからない。もしかしたら犯人逮捕の最終決定に関して、人間ではなくAIに任せるほうがいいのではないだろうか?
そんなことを思ってしまうような、恐ろしい記事だった。
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