ラプラスの魔女
台風3号は、このブログを書いている午後4時ころに近畿を足早に通過中。
南部の和歌山や四国あたりはかなりの風と雨だったらしい。でも神戸は一時的に大雨が降ったものの、風は台風という雰囲気じゃなかった。注意報は出たけれど、一度も警報にはならなかったからね。今降っている雨も、夜にはあがりそう。
今のところは人的被害は出ていないよう。かなりの雨が降ったから、しばらくは要注意だろうけれどね。いよいよ7月になって、台風の季節になってきたということだろう。
毎年思うけれど、梅雨末期の大雨や台風の影響で、必ずと言っていいほど亡くなる人がいる。ネットが普及して情報が拡散しているだろうし、誰もがテレビのニュース等を見ているはず。それでも亡くなる人があとを絶たない。なぜなんだろう?
自分は大丈夫だろう、という根拠のない確信があるとしか思えない。そういう思い込みって強いから、人間の判断力を鈍らせてしまう。もし人間が自分の周囲で起きている物理現象を原子レベルで把握することができたら、いつどこでどのような災害が起きるか予測できるはず。そうすれば危険な場所に近づかないだろう。
ところがそんな能力は人間にない。せいぜい『第六感』という直感的なものでしかない。だからそれさえ働かない人は、増水している川や自分の田んぼに近づいたりしてしまうのだろう。
そういう自然の現象を、原子レベルで人間が知覚できたらどうなるだろうか? そんな仮定に基づいた小説を読んだ。
『ラプラスの魔女』東野圭吾 著という本。まだ新しい本なので、ネタバレはしないのでご安心を。
このタイトルを初めて見たとき、どんな物語か想像がつかなかった。もしかしたらファンタジー? だけど東野さんがファンタジーを書くだろうか?
そんな不思議な気持ちで読み進めたが、やはりファンタジーではない。東野さんらしい、殺人事件を扱ったミステリーだった。でもいつもとは雰囲気がちがう。どうしてこんなタイトルになったのかわからなかったが、終盤近くになってようやくその意味がわかった。
『ラプラスの悪魔』という言葉がある。
ラプラスとはフランス人の数学者。彼がこんな仮説を立てたらしい。小説のなかで触れられている。
『もし、この世に存在するすべての原子の現在位置と運動量を把握する知性が存在するならば、その存在は、物理学を用いることでこれらの原子の時間的変化を計算できるだろうから、未来の状況がどうなるかを完全に予知できる」という仮説。
この能力を持つ存在を『ラプラスの悪魔』と呼ぶらしい。この物語の登場人物に、その能力を持つ青年が登場する。名前は甘粕謙人。姉が起こした硫化水素自殺に巻き込まれ謙人は植物人間になってしまう。
ところが天才脳科学者の羽原全太朗によって、奇跡的に意識を取り戻す。そのことによって、甘粕謙人は『ラプラスの悪魔』の能力を獲得する。その謙人が巻き起こす事件がこの物語を進行させる。
ではなぜタイトルが『ラプラスの魔女』となっているのか。
それはもうひとりの主人公である、羽原円華という少女がその能力を持っているから、だから魔女なのだ。名前を聞いてわかるように円華は、全太朗の娘。これ以上語るとネタバレになるので、口を閉じておこう。
とにかくめちゃめちゃ面白い。温泉街で起きた硫化水素による2件の中毒事故が、実は殺人事件ではないかと疑う刑事が登場する。そしてそのことでそうした事情に詳しい科学者を巻き込むことになり、予想もしなかった事件の真相と顛末が明らかになる。ボクは近いところまで予想したけれど、結果を読みきれなかった。
この作品は来年の映画化が決まっているとのこと。
羽原円華を広瀬すずさん。そして甘粕謙人を福士蒼汰さんが演じることで決定しているらしい。これはかなり面白いストーリーだから、どのような映画に仕上がるか楽しみ。
ストーリーに関係ないので、ひとつだけ面白いセリフを紹介しよう。『ラプラスの魔女』である羽原円華に、ある人物が質問する。彼女は現状の物理状況から、この世界の未来がわかるから、地球がどうなるか質問者は知りたかった。
そう訊かれて彼女は深いため息をついて、首を横に振りながら答えた。
「それはね、知らないほうがきっと幸せだよ」
えぇぇ〜、めちゃ気になるやんか〜〜!
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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