SOLA TODAY Vol.471
先日読んだ本で、グローバル化が進む現代社会で日本が生き残るには、観光立国としての地位を確立させることが必要だと書かれていた。高齢化社会となった日本において、真剣に検討するべきことだと思う。
政府や自治体もそのことを意識しているようで、東京五輪をひかえてインバウンドの人たちを受け入れる体制が整いつつある。そして実際に大勢の観光客が日本を訪れるようになった。
だけど本当の意味で観光立国として世界的に通用する国にするためには、ボクたち日本人の意識を改革する必要がある。高度経済成長の波に乗って世界有数の経済大国になった日本。先進技術で世界を牽引して、SONY等の海外でも名を知られる企業を育ててきた。でもそれは過去の話。
ボクたちがその当時の意識を持ったままで外国の観光客を迎えると、現実とのギャップによってトラブルが発生する恐れがある。その溝が埋まらないと、やがてインバウンドの人たちは離れて行くかもしれない。
だったら外国人の観光客は、日本に対してどのように思っているのか。とても興味深い記事がある。
日本を訪れる外国人のベスト3は、中国、台湾、韓国とのこと。ヨーロッパの人たちはまだそれほど積極的に日本を観光しようとは思っていない。ずっと横ばいの数字が続いている。そういう意味では積極的に日本を観光してくれる中国の人たちに本音を知ることは、今後の対応を考えるうえで貴重な情報になるだろう。
この記事は中国に在住している日本人作家が、中国人たちの本音を紹介したもの。ざっと読めばわかるが、かなりショックを受ける。
まず中国人は、何が何でも日本を観光しようと思っているわけではないということ。世界には観光立国としての地位を築いている国がいくつもある。日本はそんなライバル国のひとつに過ぎない。
なぜ日本に来るかといえば、近いということだけでなく、中国人の庶民にとってチープな旅行先だから。物価が安くて円安も進んでいる。中国のセレブたちはもっと贅沢な旅行をするので、『安物』の日本はスルーされる。あまり裕福でない人たちにとって、ちょうど手頃な旅行先が日本だということ。
それゆえに本音は辛辣なことになる。
中国人が日本に来ると驚くのは、大勢の高齢者が働いていること。空港バスで白髪の高齢者が荷物を積んでいるのを見て驚くらしい。中国は経済発展を続けていて若い世代が多い。だから都市部で働く人は若い人ばかりのにで、日本に来ると高齢者が目立つのだろう。
そして同じアジアの民族だけれど、中国人は日本人に比べて体格がいい。だからすべてにおいて小さく見えるらしい。ホテルや旅館は狭く、街並みやインフラの整備を含めて、とにかく規模の小ささを実感するそうだ。
大阪城を見たって、まったく驚かないらしい。だって中国にはもっと大きな城がいくつもあるから。自然の雄大さも大陸には及ばない。いまだに現金決済をしなければいけない店舗ばかりで、技術革新がまったく進んでいない国だと感じる。
簡単に言うのなら、ずっと過去の中国を見ているような気分らしい。ある中国人などは京都の舞妓さんの姿を異様に感じたらしく、「日本の少数民族」だと思ったらしい。多民族国家の中国人らしい感想だよねw
ところがそんな実態を知らないから、日本人はいまだに世界に名だたる経済大国だと思い込んでいるところがある。この著者は日本人だけれど、現住所は中国なので日本のホテルのフロントで中国の住所を書いた。
それまで愛想よく対応していた男性が、急に豹変して露骨に嫌な顔をしたらしい。そして怒ったような声で「パスポートを見せてください」と言った。中国の人たちのマナーの悪さが問題になることがあるけれど、少なくともこのホテルマンの対応はマズイだろう。
フランス人がアジア人を差別する話を耳にすることはあるけれど、観光客に直に接する人たちの意識改革は国家的に取り組むべきことだと思う。マナー違反をする人には毅然とした態度を取るべきだけれど、中国人だということでひとくくりの対応をするべきじゃない。
相手の立場を思いやることがホスピタリティだとするならば、今の日本の現状をボクたちはもう少し意識するべきかもしれない。外国人の本音に対して、謙虚に耳を傾けるべきだと感じた記事だった。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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