SOLA TODAY Vol.477
人間はAIとの勝負で敗戦を重ねている。将棋や囲碁ではAIにかなわないことが証明された。先日は弁護士業務を代行するAIの記事もあった。銀行の融資審査のスピードと的確な判断は、経験を積んだ銀行員の能力をはるかに超えている。
そしてついに医療の分野でもAIが勝利を勝ち取っている。
アメリカ医師会の雑誌で、乳がんの転移に関する画像判定において、人間とAIの能力を比較する記事が掲載された。
このAIには世界中の研究者が参加して、完成度を高めるために協力している。開発したのはハーバード大学とマサチューセッツ工科大学なので、アメリカにおける最高技術と言っていいだろう。
このAIはディープラーニングの技術を応用しているので、画像判定の正解を読み込ませて学習を重ねたらしい。この段階では患部に印をつけているが、次の段階では印のない画像を読み込ませて判定能力を高めている。
そして現場医療の最前線で活躍している医師11人に依頼して、画像判定の比較を行った。その結果はAIの圧勝だった。
画像をチェックして転移をどれだけ見逃さなかったか、というものを示すAUCという指標がある。このAUCの数値はAIが0.994、人間は0.810という結果になった。この数値の差は、臨床医学においては圧倒的なものらしい。
人間の医師には実際の診療と同じ時間で画像をチェックさせた。129枚の画像を2時間かけて判定させている。それゆえ見逃しが増えたと予想されるが、実際の医療現場と同じということに恐怖を覚える。人間はそれほどミスをするということ。
ちなみに時間制限なしで医師にチェックしてもらうと、AUCの数値は0.966まで上昇した。それでも人間は負けている。
なぜなら人間はその数値を出すのに30時間をかけている。ところがAIはわずか『数秒』でこの数値を叩き出している!
もちろん医療のすべてがAIに取って代わることはないだろう。もっと複雑な判断が要求されることは多く、AIが学べないこともあるはず。だけどこの画像判定のような単一的な診断は、圧倒的にAIのほうが早くて正確だということ。
こんな結果が出たら、AIを導入する医療機関が増えてくると思う。人間の医師が判断した結果を、AIのセカンドオピニオンで検証するという時代が来るだろうね。近年では手術の分野、さらに介護分野でもAIやロボットが導入されつつある。
いずれ診察や治療はAIが主導するようになり、人間はその補助業務に専念するような気がする。ブラック労働と言われている医療現場の現状にとっても、望ましいことではないだろうか。そんな明るい未来を予感させる記事だった。
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