SOLA TODAY Vol.684
法律の改正は、得てして時間がかかる。中国のような一党独裁政治なら、さほど時間はかからないだろう。でも日本のような政治システムだと難しいことばかり。
野党の対応や既得権益者への配慮等が求められ、スムーズにことが運ばない。それは犯罪に関する法律でも同じで、どうにも歯がゆい。
先日、新幹線で殺傷事件が起きた。男性がとなりににすわっていた女性をいきなり刺し殺している。この事件に対して、今月の20日に政府が対応策を発表している。
手荷物検査は先送りに 新幹線車内の殺傷事件うけ、政府が緊急対策を発表
さすがにヤバいと思ったのだろう。政府も素早い動きを見せた。ざっと見て、とりあえず必要だと思うことばかり。
適切に梱包していない刃物の持ち込み禁止。料理人の人たちも乗車するだろうから、『適切な梱包』という項目が追加されている。
新幹線車内で暴漢に対応できるよう、催涙スプレーや強化プラスチックの盾、防刃ベストの配備も決まりそう。さらに防犯カメラの映像を、複数の駅員や部署で共有することも検討されている。
これまでは痴漢やスリ対策で私服警官が乗車することがあったが、犯罪抑止のために制服警官を同乗させる案も出ている。今の段階でやれる精一杯のアイデアが出された印象はある。
だけど最重要課題だと見られていた手荷物検査は見送りになった。もしマニュアルを作ったとしても、乗車時間ギリギリに来た乗客の対応が甘くなる。するとSNS等でその方法が拡散されてしまう。厳密に実施することが、現状では無理だと判断されたらしい。
まぁぶっちゃけた話、JRの意向が反映されたんだと思う。手荷物検査をすれば、設備投資も人件費も莫大にかかる。列車の運行本数を減らすことも検討しなければいけないだろうし、乗客とのトラブル対応に追われるだろう。
さらにその隙をついて、旅客機の攻勢が強まるのは必然。飛行機はすでに手荷物検査が常態化しているので、乗客の信頼性は高い。最近では新幹線より安い便も登場している。もして手荷物検査を導入すれば、大勢の顧客が飛行機に流れていくだろう。
もし新幹線に手荷物検査が導入されることになるとしたら、おそらくさらなる犠牲者が出てからだと思う。これだけの法律改正をしても、やはり死者が出てしまった。そこまでいかないと、政府もJRも次の段階に踏み込めないように思う。
これは他のことでも同じ。先日の大阪の地震で、小学校の塀が崩れて女生徒が亡くなった。以前から指摘されていたのに、行政は放置したままだった。小学生の死を受けて、ようやく各自治体が学校周辺の塀を作り直す動きが出ている。
今ツイートで話題になっっている小中学校のエアコン設置問題や、夏場の高校野球の実施についても、死者が出ないと本格的に動かないだろう。過去の事例ばかりを持ち出して、意味のない安全神話や精神論を押しつけるだけで終わる。
法律や決まりごとの改正は、こういうものだと思ったほうがいい。結局は、ボクたち自身が自衛するしかないということだろうね。
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