得体が知れないから怖い
つい先日、超絶にバカなデマが飛び交っていた。新型コロナウイルスの原因が、新しい携帯電話のネットワークである5Gだ、という笑うしかないデマ。
そして、5Gの電波に乗ってウイルスが拡散されるというデマまで飛び交い、ヨーロッパでは5Gの中継基地が破壊されるという被害もあった。
こういうのは情弱というのを通り越して、単なるアホでしかない。それも暴力に訴えるというタチの悪いアホ。
あるネットの記事に、こうしたデマの流れる理由が書かれていた。『人間は目に見えないものが怖い』ということ。
ウイルスも5Gも目に見えないものだから、人間の恐怖がそのまま反映されてしまっている。スティーブン・キングが殺人ウイルスをテーマにした『ザ・スタンド』や、携帯電話でゾンビ化する『セル』という小説を書いたのは、そんな人間心理を熟知しているからかも知れないね。
そして同じく、スティーブン・キングが得体の知れない恐怖を小説にしている。
『リーシーの物語』上巻 スティーブン・キング著という小説。
まだ上巻なんだけれど、とにかく長い小説。上下二段に分かれて小さな字でぎっしりと文字が埋まっている。だから上巻を読了するのに5〜6日もかかってしまった。
とても不思議な小説で、先ほどの『ザ・スタンド』や『セル』のように明確な恐怖が見えてこない。それだけに余計怖い。
主人公はタイトルで分かるとおりリーシーという女性。夫のスコットは有名な作家だけれど、2年前に死んでいる。その夫が残した未発表の原稿を手にしようとする連中がリーシーに接触してくる。そういう意味ではサスペンスの要素もある。
事実、上巻のラストでは、精神的に病んだ男によってリーシーが監禁されたところで終わっている。でも単なるサスペンスじゃない。
夫のスコットには秘密がある。というかスコットの一家。スコットの父親はどこか狂っている。定期的に怒りを爆発させ、息子たちに恐ろしいことをさせる。それができないと両手をナイフで切り刻む。そうすることで『何か悪いもの』が血液から出るそう。
ところがスコットの一家は、そんな傷を負ってもすぐに治癒する。どうやら目に見えない存在の気配を感じる。これはスティーブン・キングお得意の『ダーク・タワー』シリーズの闇と共通しているかも。
リーシーはスコットと結婚する前に、自分の一家にはそんな恐ろしい血が流れていることを告白する。だから子供は絶対に作れない、と。
そして死んだはずのスコットが、リーシーに接触してきた。まるでいまでも生きているかのように、メッセージを送ってくる。一時的に精神を病んだリーシーの姉に取り憑いたりもする。
つまり何が言いたいかというと、上巻を読んだ段階ではまったくこの先に何が待っているのかわからない。だからなんとも言えない恐怖が残っている。下巻を読んで結末を知るまで、その恐怖が続くことになる。
ところが残念なことに、神戸市の図書館が5月6日まで休館している。だから下巻が読めない。緊急事態宣言が解除されるまで、この物語の結末はお預けだということ。仕方ないから、勝手に想像しておこう。来月になって答え合わせするのを楽しみにしてね。
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