子供向けだと侮ってはいけない
ドラッグストアのお菓子はびっくりするほど安い。スーパーでは太刀打ちできないし、安売り専門の菓子店よりもさらに下の値段を攻めてくる。難点としては、種類が少ないので買える商品が限られてくるという程度かな。
だからボクは、ドラッグストアで日用品を買うついでにお菓子をチェックする。先日あるお菓子を買って自宅の台所カウンターに置いた。その袋の表にどこかで見たことのあるマンガが印刷されていた。それは電子書籍で気になっていた児童小説の表紙だった。
これも何かの縁だと思い、子供向けの小説を読んでみることにした。
2021年 読書#104
『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』廣島玲子 著という小説。調べてみるとアニメにもなっていて、かなり人気作品とのこと。
普通の次元には存在しない『銭天堂』という駄菓子屋。助けを求めている人、選ばれた人だけがその店に出会える。店主は紅子というこのイラストの女性。年齢不詳。ただ、かなりデカいらしい。
子供用の小説らしく、丁寧にふりがなが振ってある。文章は読みやすいけれど、大人にはちょっと物足りなく感じる。だけど内容は思っていたより面白く、不思議なお菓子が次々と登場する。いまのところ出版済みで16冊もあるみたい。
とりあえずこの1冊目の作品で登場したお菓子を紹介しておこう。
『型ぬき人魚グミ』:型と材料の袋がセットになっている。食べると人魚のように速く泳ぐことができる。ただし、食べたあとにコップ一杯の塩水を飲み忘れると使用者はだんだん人魚と化してしまう。塩水を飲み忘れた場合、付属の人間の型で作ったグミを食べれば脚が元に戻るが、完全に人魚になってしまった場合二度と人間には戻れなくなる。
『猛獣ビスケット』:様々な猛獣型のビスケットの詰め合わせと猛獣遣い型のビスケットのセット。箱から出すと本物のように動き出す。猛獣遣いを先に食べれば食べた者を主と認めて大人しくなり、残りを安全に食べられるが、逆に猛獣を先に食べてしまうと「仲間を食べた不届き者」と見なされ、巨大化したビスケットに襲われてしまう。
『ホーンテッドアイス』:食べるとひんやり冷たいアイスクリーム。半分だけ食べて残りを冷蔵庫にしまっておくと心霊現象を体験できる。残りを食べてしまえば効果はなくなる。ただし複数人で食べてしまった場合はお化けが混乱し最後に食べた人に取り憑いてしまうため、必ずアイス一つにつき一人しか食べてはならない。
『釣り鯛焼き』:鯛焼きを釣ることができるバケツと釣竿のキット。ただし付属の釣竿以外を使用すると、鯛焼きのいない普通の海に通じてしまうことがある。
『カリスマボンボン』:食べるとカリスマ性を発揮し、あらゆる人からもてはやされるマシュマロ入りのボンボン。
『クッキングツリー』:鍋に肥料と種を埋めると美味しい料理の実がなる木。台所の神様が宿り、いくらでも実をつけてくれる。「いただきます」と「ごちそうさま」をちゃんと食前と食後に言わないと、木が枯れてしまうばかりか木に心を食べられてしまう。
というお菓子。それぞれに物語があり、基本的に子供たちが主人公。このお菓子によって幸せになる子もいれば、うまくいかない人もいる。その分かれ目になるのはシンプル。
きちんと説明書きを読むかどうか。これは子供に限らず大人にもいえる。自分勝手に判断して、説明も聞かずにことを進めてしまう。そして結果としてせっかくのチャンスを逃してしまうことがある。だから大人が読んでも心に響く。決して子供向けだと侮ってはいけない物語だと思う。
さて2作目以降をどうするのか? 気になるので読んでみたい気持ちはある。ただこのままの調子でお菓子が出てくるだけならつまらない。この駄菓子屋、そして紅子という女性の正体が少しずつ明らかになっていくんだろうか? それなら読み進めてみたい。
最終章に書かれていたけれど、紅子は人間を幸せにすることが目的。だからお菓子を提供された人が幸せになったら彼女の勝ち。だけど失敗すれば彼女の負けになる。つまり誰かと勝ち負けを競っているということ?
とりあえずもう2〜3冊読んでみよう。それで判断すればいいな。
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