物語に取り憑かれた男の狂気
9月の末までバタバタしていたけれど、10月に入っても基本的に同じペースで動いている。
ちょっとした考えがあって、いまは過去に書いた作品をリライトしている。パソコンに記録されたデータを引っ張り出して書き直しているので、それほど大変な作業ではない。むしろ楽しいくらい。
だけど残されている原稿が昔ながらの原稿用紙だったとしたら、その作業は気が遠くなるような大変なものになりそう。もしパソコンがなければ、ボクは小説を書こうなんて絶対に思わないだろうな。そう思うと手書きの原稿というのは、貴重な財産だよね。
そんな手書きの原稿をめぐって事件が起きるという、めちゃ面白い小説を読んだ。
『ファインダーズ・キーパーズ』上巻 スティーブン・キング著という小説。
少し前にこのブログで『ミスターメルセデス』という小説を紹介した。退職した元刑事が、サイコパス少年の爆弾テロを阻止するという物語、スティーブン・キングにしては珍しく怪物も幽霊も登場しない。本格的なミステリー小説と言っていい。
その元刑事はビル・ホッジス。そしてこの作品は全部で3作あるホッジスシリーズの第2弾になる。前作でホッジスに加えて、ホリーという中年の女性、そして高校生のジェロームという3人が大活躍した。
この作品ではホッジスが『ファインダーズ・キーパーズ』という探偵事務所を立ち上げて私立探偵をやっている。コンピュータの天才でもあるホリーは、この事務所で事務員として働いている。ジェロームは大学生になったと紹介されているだけ。でも下巻では登場するだろう。
上巻ではホッジスは少しだけしか登場しない。過去と現在に起きた事件が物語の中心になっている。
1970年代後半、ある作家が殺されて現金を奪われた。その金庫には人気シリーズ小説の続編が書かれた大量のノートもあった。作家を殺して現金とノートを奪ったのはモリスとい若い男。
この作家の大ファンだけれど、3作目の主人公が気に入らない。『ミザリー』の登場人物と同じだね。それで作家を殺してしまう。ところが奪ったノートに書かれていた4作目には、彼が望むような主人公が書かれていた。モリスは現金とノートをトランクに詰めて、誰にも見つからないように埋める。ところが彼は別件で逮捕されて終身刑を受けた。
そして21世紀になって、ピートという少年がそのトランクを偶然に発見する。彼も同じくその作家の作品に取り憑かれていた。そしてそのノートは、作家が殺されて奪われたものだと気づく。
ただピートの家は貧しい。両親は必死で稼いてでいるけれど、妹が望む学校に進学させることさえできない。そこでピートは、その原稿をお金に変えることを考える。
そんな時期に老人になったモリスが仮釈放される。モリスは続編を読むことだけを生きがいに刑務所生活を過ごしてきた。なのにノートは誰かに奪われている。
ここからは想像がつくよね。この二人が関係した事件が起きるのは必至。上巻のラストでは、その兆しがちらほらと見えている。ピートとモリスに共通しているのは、殺された作家が書いた登場人物を異常なほど信奉していること。だから二人ともノートを手放したくない。
『指輪物語』に出てくるフロドとゴラムの関係に似ている。魔王の指輪に取り憑かれているかのように、この二人も小説に心を奪われている。ホッジスが下巻でどう関係してくるかわららないけれど、恐ろしい事件が起きそうな予感がする。
この先の展開を想像しながら、あいだにちがう本をはさんでから下巻を読もうと思っている。楽しみだなぁ。
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