温習会とキンモクセイ
今日も秋晴れの気持ちいい1日でした。プラプラと歩くのに最適な季節です。今朝自宅を出てしばらく歩くと、とても可愛いワンちゃんがお散歩中でした。初対面でしたが、思わず声をかけてしまいました。
アンディくんという7歳の男の子です。人懐こくて、とても愛らしいワンちゃんでした。飼い主さんの話によると、先代ワンちゃんのラブラドールが少しでも長生きしてくれるよう、家族に迎えた子だそうです。そのおかげなのか、ラブラドールは16歳まで元気に生きたとのこと。
この写真の上部に写っているリードは、その先輩ワンちゃんが使っていたものだそうです。小型犬用のリードを買ってやっても、このリードでないと散歩に行かないとのこと。もしかしたら亡くなった先代ワンちゃんと、一緒に散歩している気分なのかもしれませんね。
あまりに気持ちのいい天気なので、今日の帰りは遠回りして歩きました。少し坂を登って神戸大学の構内に侵入。日曜日なので、ひっそりしていました。でもさすが大きな大学です。乗馬クラブがあるのですね。綺麗な馬場で、大きな馬が学生に世話されていました。
散歩をしていると、時おり芳しい香りに足が止まります。キンモクセイです。10月の声を聞いたとたん、あちらこちらでキンモクセイの香りを楽しめるようになりました。私はこのキンモクセイの香りをかぐと、ある行事を思い出します。それが祇園甲部で毎年行われている『温習会』という舞の会です。
春の4月1日から30日までは『都をどり』、そして秋の10月1日から6日までは『温習会』、これは明治時代から現代まで続いている祇園町の大切なイベントです。私が京都で住んでいたマンションの階段を降りて駐車場に出ると、そこにキンモクセイの木がありました。あぁ、今日から『温習会』だなぁと思うと同時に、そのキンモクセイの香りを感じます。私にとっては、その二つはセットになっていました。
春の『都をどり』に比べて期間も短く、公演回数も1日1公演です。午後4時の開演なので帰宅は遅くなりますが、春に比べたら職員としては少しは気が楽でした。でも芸舞妓さんにとって、大切な舞の会です。
『都をどり』は芸舞妓に接する機会があまりない一般の方に向けて開催されるものです。だから毎年新作です。ところが秋の『温習会』の演目は全てが京舞井上流の正式な演目になります。それも普段からお座敷に呼んでくれる馴染みのお客さんのための行われるものであり、古くは井上流の舞の試験も兼ねていました。だから芸舞妓さんにとっては、春以上に真剣勝負の場でもあります。
その証拠に『温習会』の指定席は、全てが出演者持ちになります。指定席で見たい人は、馴染みの芸舞妓さんからチケットを買うのです。一般の方がこの『温習会』を見たいと思ったら、二階さじきの自由席券しか手に入りません。そこで私たち職員が苦労する仕事が登場します。
それは何かと言えば、指定席の切符割です。出演者の役どころに応じて枚数が違いますが、どの指定席をどの芸舞妓さんに渡すかを決めるのは、事務所の職員です。私がこの祇園甲部の事務所に勤めた最初の年から退職するまで、毎年この『温習会』の切符割を事務長から任されていました。
最初の頃は胃が痛くなるほど苦労しました。どの芸舞妓さんだってお客さんに売りやすい「いい席」が欲しいのは当たり前です。でも物理的に指定席数は限られています。嬉しくない席もあります。でもできる限り芸舞妓さんから不満が出ないよう、指定席の割り振りをしなければいけません。
大切なのは上下関係ですね。年下であっても、1日でも早くデビューしていれば先輩です。だから先輩よりも後輩に「いい席」を渡すことはタブーです。ましてや芸歴何十年という方が大勢おられます。そのあたりの人間関係や経歴を理解していないと、とんでもないことになってしまいます。
まるでパズルを解くようなものですから、毎年9月頃になるとヒ〜ヒ〜言わなくてはなりませんでした。そう思うと春の『都をどり』の切符割は、一般の方や旅行会社等の予約が多くありますから、少しは気持が楽です。『温習会』は出演する芸舞妓さんの顔を思い浮かべながらやっていますから、かなりしんどいです。今年も誰かが切符割をしたのでしょう。お疲れ様です。
残り5日と6日だけですが、もし京都に行かれる機会がある方は、ぜひこの『温習会』を見てください。自由席でも十分に楽しめるはずです。本格的な井上流の京舞を堪能できます。私も職員だった時代は、事務所を抜け出して会場で鑑賞させてもらっていました。古典芸能に触れるのはいいことですよ。
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