SOLA TODAY Vol.336
科学研究というものは、基本的に地味なもの。いつ成果が出るかわからないのに、コツコツと継続していく。もしかしたら失敗で終わるかもしれない。それでも前を向いていくのが、研究者という人たちが抱えている宿命なのだろう。
さらに発表された結果に対して、いまいちピンと来ないものもある。例えばAIの進化などは自分の生活に直結することが想像できる。でもあまりに実生活とかけ離れている内容だと、あっ、そうなんだ、という言葉しか出てこないことがある。
昨日の記事が、まさにそんな印象。
タイトルを見ると、なんだかすごいことのように思う。いや、実際にすごいことらしい。これまで月というのは乾燥しているだけの衛星だと考えられていたけれど、月の内部に大量の水が存在している、という研究結果が7月24日に発表された。
論文を発表した研究者によると、「今回の研究では、周回探査機の観測データを用いて、月の内部の水を示す痕跡を月全体で確認した」とのことで、「こうした水は、未来の月探査のための原位置資源として利用される可能性がある」と語っている。
月に水があるかも、というのは10年前に予測されたらしい。アポロが持ち帰ったガラス粒子に、水が含まれる化学的証拠が発見されている。そこから月の内部に水があるのでは、という発想に至った。そういう意味では、10年もの歳月をかけて研究された貴重な結果なのだろう。
だけどボクたちにすれば、あまり実感がない。月に水があるからって、それがどうやねん? そう思うのが普通の感想だと思う。たしかに将来的に月探査を行なったとき、この研究者が言っているように利用価値があるのかもしれない。でもそんな未来に対して、やっぱり実感は持てない。
だってシリアでは激しい内戦が続き、ISのテロ行為とそれに関する報復で大勢の人が命を失っている。北朝鮮は今日にもミサイルの発射実験をするかもしれない。日本国内では深刻な貧困や、ブラック労働が問題になっている。
現実的なことで頭がいっぱいなのに、月に存在する水なんてどうでもいいやんか、というのがほとんどの人の本音だと思う。ボクもそう感じた。
だけどもっと俯瞰的な視点に切り替えると、こうした研究の積み重ねこそが人類の歴史を牽引してきたのだとわかる。ボクたちが何気なく使っている日用品の数々も、こうした一見無駄に見える基礎研究があって実用化されている。
だから決して、無駄な研究なんてない。やり方や考え方に問題があっても、未知を既知に変えていく仕事は、永遠に続くものだろう。もしかしたら、月に水があるという発見は、近い将来の人類を救うことになるかもしれない。
現状では想像できなくても、同じような事例が過去にもあったはず。だから実用的でないような研究に対しても、ボクは関心を失くさないようにしたいと思っている。大勢の人がそうした視点を持つことで、天動説が地動説にひっくり返ったようなパラダイムシフトが起きると信じている。
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