SOLA TODAY Vol.339
ボクがよく見るテレビ番組で、定年を過ぎた、あるいはその年齢に近づいた人たちの第二の人生を紹介しているドキュメントがある。
いろいろな人生があるけれど、よく登場するのが飲食店の経営。田舎での暮らしを選択した人がメインの番組なので、圧倒的に多いの蕎麦屋だよね。その次に多いのがカフェ等の軽飲食のお店。昨日は、おはぎ屋さんだったなぁ。
都会で暮らすか、田舎で暮らすかは別にして、定年を迎えて退職金を受け取った人のなかで、第二の人生として『飲食店経営』を選択する人が多いらしい。高齢化社会になって定年後も働きたい人が多く、金銭的な不安を抱えてたりする背景もあるのだろう。
そこで収入の確保も兼ねて思いつくのが飲食店。自分が気に入った美味しいものを作り大勢の人に提供することで、人との交流を通じて社会と関わっていたい。そう考える人が多いのだろう。
ところがそんな傾向に待ったをかける記事を読んだ。
なんとも恐ろしいタイトル。でも記事を読むと、まだこれでも穏やかに書かれているほうだと思う。それほど飲食店経営というのは難しい。
この記事の著者はベンチャーキャピタリストとして、1000以上の企業を見てきた人。その彼が飲食業は「基本的に勝てないビジネス」だと断言している。
その事実を証明するかのように、最近の5年間における企業の平均廃業率は10.2%だが、飲食業に限定すると18.9%の廃業率という数字が出ている。これは全業種のワースト1になる。
なぜそれほど飲食業が大変なのか。この記事はとてもわかりやすく書かれている。
まずは人件費率の高さ。町の中華屋さんがしぶとく経営を続けている理由として、ある程度の料理のレベルが高いのは当然だけれど、家族経営であるということが大きい。つまり他人に給料を払わなくていい。
人を雇って飲食店を営むことで、一気に経営を圧迫する。同じような飲食店が数え切れないほど乱立しているのだから。同じレベルなら安いほうへ人は流れるだろう。人件費を商品代金に上乗せせざるを得ない段階で、素人には負けが見えている。
でもボクが見ている番組のように、家族でなんとかやっている人たち場合なら大丈夫だと思える。だけど飲食店の怖さは別にある。それは場所を簡単に変更できないこと。
自分が出店した近くに競合店が出店しても、その場所で勝負するしかない。立地点として他店が有利にたてば、同じ味を提供していても客が奪われていくだろう。実店舗が飲食店の基本だから、ネット販売のように場所はどこでもいいというわけにはいかない。
そしてもっともヤバいのが、模倣されること。飲食店の経営ノウハウとして、顧客にイメージを与えるストーリー作りが大切になるらしい。美味しいのはもちろんだけれど、消費者としては店の雰囲気も重要。気持ちよく食事の時間を過ごすために、経営者は店のコンセプト作りに苦心する。
だけどそんなもの簡単に真似されてしまう。この記事にも例が書かれているが、パイオニアとして新しいコンセプトを打ち出しても、これはいけると思われた瞬間、他店に真似をされてしまう。こればかりは防ぎようがない。
要するに飲食店経営というものは、ゲリラ部隊同士の戦争のようなもの。いつどこで敵が現れるのかビクビクしながら、必死で自分の部隊を守らなければならない。いわゆるレッドオーシャンと呼ばれているもので、過当競争の最たる業種だということ。
だから定年を迎えた素人が、簡単に手を出せる業種じゃない。せっかくの退職金を、あっという間に失ってしまうかもしれない。知られているわずかな成功例の影に、泣く泣く店を閉めた人が多数あるということだろう。
ボクは食べることは好きだけれど、お店をやりたいと思ったことはないなぁ。だけど小説を書くなんていうことは、飲食業と同じくレッドオーシャンに首を突っ込んでいるのは事実。ある意味、同じリスクを背負っているのかもしれないな〜w
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